
一時的な変動要因を除く基調的な物価上昇率が目標の2%に到達したことで、日銀の金融政策はインフレ抑制に重心が移る。原油高や円安に伴う輸入物価上昇、人工知能(AI)関連需要の急拡大など物価上昇圧力が強い中、政策金利を景気を刺激することもなく冷ますこともない「中立金利」へ引き上げることを目指す。今後、3~4カ月に一度のペースでの利上げが想定され、次回12月会合での政策変更が視野に入る。
「基調物価が2%に達したので、目に見えて上がるのは望ましくない。上振れリスクには適宜対応する」。植田和男総裁は30日の記者会見で、これまで物価上昇を促してきた政策運営からの「局面変化」を強調した。
会合では、高田創審議委員が政策金利を中立金利に近づけるペースを速めるために利上げを提案。今回は反対多数で否決されたが、日銀が中立金利への引き上げを模索するのは、景気・物価の上振れと下振れという双方向のリスクに機動的に政策対応できる位置となるためだ。
日銀は中立金利を1.1~2.5%と幅広いレンジで推計しており、ピンポイントでの特定は難しい。9月会合での1.25%への利上げでレンジの下限は突破したものの、日銀は銀行貸し出しの増加が続くなど金融環境はなお緩和的と判断する。植田氏も「政策金利は中立金利より下の水準にある。そのギャップを埋める操作は残っている」と説明した。
市場では来春までに2度の利上げの織り込みが進む。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、12月に1.5%、来年3月に1.75%に利上げし、いったん小休止。景気拡大が続けば、来年12月までに利上げの再開を予想する。
中立金利への到達について、植田氏は「これまでの利上げの累積的な影響を少しずつ確認していくしかない」と述べた。物価上振れに政策対応が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」にも注意を払いながらの、政策運営が求められる。
〔写真説明〕金融政策決定会合に臨む日銀の植田和男総裁(中央)ら=30日午前、東京都中央区の日銀本店(代表撮影)
2026年10月31日 07時05分