岸田首相「日韓新時代」アピール=関係構築に自信、歴史認識なお懸案



岸田文雄首相は8日、韓国との「シャトル外交」再開と位置付けた2日間の訪韓を終えた。帰国後の自民党役員会で「日韓新時代をつくっていきたい」と述べ、尹錫悦大統領との二人三脚に意欲を表明。政府・与党内では日韓の本格的な局面転換に期待が高まる一方、韓国世論の反発を警戒する声も上がる。

「昨晩、個人的なことも含め、信頼を深める大変有意義な会話をした」。首相はソウルをたつ前に記者団の取材にこう強調。首脳間のパイプを軸にした関係正常化に自信をにじませた。

「昨晩」というのは7日夜に大統領公邸で開かれた夕食会のこと。3月の尹氏来日時に続き、夫人を交えて交流を図った。前回から50日余りで実現した訪韓について、日本政府関係者は「首相の強い意向で直前に決まった」と明かす。

7日の首脳会談後の共同記者会見では元徴用工問題に関し、「心が痛む」と表明した。周辺によると、首相自ら表現に手を入れた。

尹氏は首相の発言を受け、「(歴史問題は)どちらかが一方的に要求できる性質ではない」と直ちに応じた。日本外務省幹部は、対日関係で近年の韓国大統領に見られなかった言いぶりが目立つとして「尹氏は自ら決断できる大統領だ」と今後に期待を示す。

北朝鮮の核・ミサイル開発や台湾海峡などでの中国の示威行動を前に、日韓が米国を交えた3カ国連携の強化を迫られつつあることも関係改善を後押しした。自民党の茂木敏充幹事長は8日の記者会見で「安全保障環境が厳しさを増す中、重要な機会になった」と評価。韓国に強硬姿勢を取る自民党保守系も、「心が痛む」発言については「踏み込み過ぎだ」とくぎを刺しつつ、会談全体は「日米韓の連携に向けて良かった」と述べた。

立憲民主党の泉健太代表は「非常に前向きに受け止めている。これを1回ずつとせずシャトル外交を継続させていくべきだ」と記者団に語り、未決着の懸案解決に努めるよう求めた。

一方で、韓国内では歴史認識などをめぐり日本の対応が「不足している」との不満がなお強い。8日に首相と面会した韓国の韓日議員連盟メンバーからも「歴史問題により積極的な努力が必要だ」(最大野党議員)との声が出た。

自民党の閣僚経験者は「問題は尹氏が少数派ではないか、ということだ」と指摘。首相周辺は「尹政権が倒れてしまうのではないか」と懸念を口にした。

〔写真説明〕記者団の取材に応じる岸田文雄首相=8日午前、ソウル 〔写真説明〕韓国訪問を終え、帰国の途に就く岸田文雄首相(右)と裕子夫人(右から2人目)=8日午後、ソウル空軍基地(代表撮影・時事)

2023年05月08日 19時54分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース