発行1年、新紙幣の普及率3割=前回比ペース半減、現金離れ背景



新紙幣の発行開始から来月3日で1年を迎える。日銀は「大きなトラブルはなく、順調に発行を続けている」と説明する。ただ、普及率は現時点で3割程度。2004年の前回の改刷時と比べてペースは半減している。背景にはキャッシュレス化の進展に伴う「現金離れ」や、長期にわたった超低金利時代に膨らんだ「たんす預金」の影響があるとみられる。

日銀によると、市場に出回っている新紙幣は5月末時点で約50億枚。流通総数に占める割合は28.8%にとどまる。04年の新紙幣発行の際には、同じ時期の普及率は61.1%に上っており、ペースは大幅に鈍化している。

もっとも、普及の遅さは日銀にとっては想定内と言える。理由は主に三つある。一つ目は分母となる流通紙幣の数が約110億枚だった20年前から約1.5倍に増えた事情がある。日銀の異次元緩和で低金利の状況が長く続いたことで、個人や企業が現金を消費や運用に回さず、自宅などに保管しておく「たんす預金」が増加。円滑な紙幣切り替わりの妨げとなっているもようだ。

二つ目は現金離れだ。経済産業省の調査では、クレジットカードや電子マネー、QRコードなどによるキャッシュレス決済額が個人消費に占める割合は24年に42.8%と初めて4割を突破した。現金が使われる頻度はこの20年で大きく低下。銀行から紙幣を引き出す需要が減っていることも普及が進まない理由となっている。

前回改刷時は偽造紙幣が多発し、普及を急ぐべき事情があったことも影響していると日銀は説明する。日銀は「(今回は)世界最高水準の偽造防止技術を盛り込んでおり、安心して使ってもらいたい」とし、積極的な新紙幣利用を促している。

【時事通信社】 〔写真説明〕新紙幣の発行開始に際し、あいさつする日本銀行の植田和男総裁=2024年7月3日、東京・日銀本店 〔写真説明〕新紙幣を掲げる人=2024年7月3日、東京都千代田区

2025年06月29日 07時07分


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