原子力規制委員会の専門家チームは28日、原発事故時の屋内退避の運用見直しに関する報告書を取りまとめた。3日間としていた退避期間の目安について、自治体からの意見を踏まえて「3日後のタイミング以降は、継続できるかを日々判断する」に修正。退避中に一時外出できる事例を細かく示すなどした。規制委は今後、原子力災害対策指針(防災指針)の改定を議論する見通し。
検討チームが2月に公表した報告書案に対し、自治体から「屋内退避が3日間で終わるとの誤解を与えかねない」などの意見が寄せられた。そこで、3日目以降も屋内退避を継続することが「基本」と明記。3日後を退避継続の可否を判断するタイミングの目安とし、物資の供給や人的支援の状況などを考慮するとした。
一時外出については、自治体向けの解説文書と合わせて具体的なケースを例示。生活物資の受け取りや通院、家屋の除雪、家畜などの世話のほか、道路やライフラインの復旧作業、医療機関や介護施設の運営に従事する民間事業者の活動を挙げた。
自治体からの意見は約250件に上った。昨年1月の能登半島地震で家屋の倒壊や集落の孤立が相次いだ石川県は「自然災害により建物や道路が損壊した場合の考え方を改めて検討してほしい」と指摘した。報告書などに反映していない意見については、規制委事務局の原子力規制庁が4月までに個別回答する。
規制委の伴信彦委員は会合終了後、「複合災害への対応は政府として考えていかなければいけない」と強調。「報告書を出して終わりではなく、関係者ときちんと共有していきたい」と述べた。
防災指針では、重大事故により放射性物質の放出が予想される場合、原発から5~30キロ圏内の住民に被ばくを避けるための屋内退避を求めている。ただ、これまでは期間や解除のタイミングなどについては明示されていなかった。
〔写真説明〕原発事故の避難訓練で、スクリーニングを受ける避難者=2019年11月、新潟県燕市
2025年03月28日 21時19分