
ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した免疫細胞に、2種類のタンパク質を同時に作り出す遺伝子改変を行うことで、固形がんの治療効果が向上すると、京都大iPS細胞研究所などの研究グループが13日、発表した。iPS細胞を使ったがん免疫療法で効果が出にくかった固形がんの新たな治療法の開発につながることが期待されるという。論文は同日付の米科学誌「モレキュラー・セラピー」に掲載された。
近年、がん患者の免疫細胞を活性化させてがんを攻撃する「がん免疫療法」が注目されている。ただ、血液がんには治療効果を示す一方、固形がんでは免疫細胞のがんへの移動能力やがん付近での増殖能力が低く、十分な治療効果が得られていない。
研究グループは無限に増殖でき、容易に遺伝子操作が可能なiPS細胞に着目。iPS細胞から作製した免疫細胞で、「IL―15」と「IL―21」という2種類のタンパク質を同時に生み出す遺伝子改変を行い、肝細胞がんのマウスに投与すると、従来のiPS細胞から作製した免疫細胞に比べ、がんの増大を抑制し、マウスの生存率を向上させることを確認した。
また、がんが出すタンパク質「ケモカイン」を感知する物質を増やし、免疫細胞ががんに移動する能力が高まることも判明。がんを攻撃する能力が高い状態を維持し、免疫細胞を増やす能力を持つことも突き止めた。
同研究所の金子新教授(免疫再生治療学)は「2種類のタンパク質を使って固形がんの治療で必要な免疫細胞の移動能力や増殖能力を改善できた。iPS細胞の特性を生かし、高品質な治療細胞を大量かつ安定的に提供できる新たな免疫療法として活用できる」と話している。
〔写真説明〕京都大iPS細胞研究所=京都市左京区
2026年05月13日 08時51分