
親しかった相手から突然攻撃を受けると、「嫌い」という感情が脳内でどのように生じるのか。東京大の研究グループが、特定の相手に対する感情の変化は神経回路の変化によってもたらされることをマウス実験で解明した。将来的には、うつ病など対人関係に関わる疾患の解明や新たな治療法の開発につながる可能性があるという。論文は10日、米科学誌サイエンス電子版に掲載された。
奥山輝大教授らの研究グループは、対象のマウスに2匹のマウスを覚えさせた上で、片方だけを攻撃的な個体に人為的に変化させた。対象マウスは、攻撃してきた相手だけを避けるようになり、この前後に脳内でどのような変化が起きているかを調べた。
その結果、記憶を担う海馬内の一部領域と、感情をつかさどる、へんとう体を結ぶ神経細胞同士の結合が強まっていることが判明。光を当てて神経細胞の活動を制御する技術を用いてこの結合を弱めたところ、攻撃相手を避ける行動は見られなくなった。
また、同じ技術などで特定の相手を記憶する神経細胞と、恐怖に関わる神経細胞を同時に刺激したところ、本来嫌っていなかった相手に嫌悪感情を持つようになった。
奥山教授は「現代はSNSで見知らぬ相手から攻撃され、うつ状態になる人もいる。神経メカニズムの理解は社会的な需要がある」と話している。
〔写真説明〕攻撃するマウス(左)と身を守ろうとするマウス(藤原英史さん撮影)
2026年07月10日 07時02分