
日本国憲法公布から80年が経過し、インターネットやSNSが登場したことで、21条が定める「表現の自由」を巡る状況も大きく変化しつつある。SNSや情報社会に詳しい慶応大大学院の山本龍彦教授(憲法学)は「偽情報や誹謗(ひぼう)中傷の拡散・増幅といった現代的問題は、SNSの『お薦め』の仕組みやサービス設計に一部起因している。人間の本性に強く訴え掛ける刺激的で魅惑的な言説に覆われることで、『多様な情報を主体的に受け取る自由』が失われつつある」と主張。「情報空間への国の適切な関与が必要だ」と訴える。
山本教授は、有害で誤った情報が流れても、批判する言論があれば、ほっておいても情報空間がうまく回っていく「思想の自由市場」という考え方がこれまでは主流だったと説明する。
しかし、「閲覧数や閲覧時間の増加はSNSのビジネスモデルそのものとつながっているため、プラットフォーム事業者の自主規制に任せるのは難しい」と指摘。「この状況を国家が放任すれば、われわれの自由の増大より、事業者の力の増大をもたらし得る」と懸念を示す。
オーストラリアで16歳未満のSNS利用が禁止されるなど、海外では子どもを対象に年齢での一律規制を導入した例もある。しかし山本教授は「利用者が自由に発信し、知る権利を制約する恐れがある。SNSを通じて人とつながる子どもにとっては、人格発展の場が奪われる可能性もある」と慎重な見方を示す。
その上で「一律規制ではなく、『依存』をもたらすサービス設計の改善など、情報空間の健全化に向けた事業者の取り組みを促すような構造的な規制をするべきだ」と提言した。
〔写真説明〕取材に応じる慶応大大学院の山本龍彦教授=10月22日、東京都港区
2026年11月03日 07時07分