
カーシェアリングサービス「タイムズカー」の会員情報漏えい問題で、被害者らの集団訴訟に向けた動きが進んでいる。個人情報の流出を巡ってはこれまで企業に賠償を命じた司法判断もあるが、予期せぬサイバー攻撃を受けた場合の責任追及にはハードルもある。同様の訴訟は長期化する傾向にあり、識者は「企業は一層厳格な情報管理が求められる」と指摘する。
「個人情報保護の在り方に一石を投じたい」。タイムズカー会員らに集団訴訟を呼び掛けている牧野裕貴弁護士は10月26日、記者会見で力を込めた。運営会社側は運転免許証画像などが漏えいした人に3000円の見舞金を支払うと発表したが、訴訟では1人最大約5万円の損害賠償請求を検討している。
2002年に発覚したエステ大手TBCグループを巡る訴訟では、東京地裁が07年、1人最大3万5000円の賠償を会社側に命じた。氏名や住所のほか、関心のあるエステコース名も流出し、より秘匿される必要性が高いと判断した。
通信教育大手ベネッセコーポレーションの委託先従業員が14年、顧客情報を名簿業者に売却した事件も訴訟に発展。東京地裁は24年、ベネッセ側の過失を認め、3338人に1人3300円を支払うよう命じ、現在も最高裁で争いが続く。原告代理人の真鍋淳也弁護士は「本当に被害に遭った原告かが争点となり、原告数が多いため特定に何年もかかった」と振り返る。
タイムズカーの訴訟については「免許証流出は損害の程度が大きいが、想定外の不正アクセスに対する防御体制をどこまで求めるのか。過失を立証するハードルは高い」と話した。
TBCの訴訟を手掛けた紀藤正樹弁護士も「通常の防御をしていても防げたかが議論になる」と指摘。集団訴訟には意義があるとしつつ、「個別の事業者の問題として済ませる話ではない。官民を挙げた個人情報保護対策が必要な時期に来ている」と述べた。
情報セキュリティーに詳しい明治大の湯浅墾道教授は、タイムズ側が退会した会員情報を7年間消去せず、保有していた点を問題視。「不要な個人情報を抱え込む方がリスクを高めることが明らかになり、一層厳格な管理が求められる」と話す。
重要インフラなどを除き、これまでサイバー対策は企業の自主的な施策に委ねられてきたとし、「今後は国が規制の網を掛けざるを得ないかもしれない」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕カーシェアリングサービス「タイムズカー」の看板
2026年11月02日 11時11分