
2021年東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件を受け、大規模スポーツ大会の運営で巨大広告代理店への依存を見直す動きが進む。愛知・名古屋アジア大会とアジアパラ大会は、組織委員会が地元代理店など4社の共同事業体と連携。今後のモデルケースとなるか注目される。
◇組織委も奔走
大会の準備は誤算から始まった。スポンサー集めなどを依頼する予定だった広告大手の電通が、事件の影響もあって辞退。全国規模の営業網に頼れなくなった中、23年に現在のマーケティング体制づくりに入った。
組織委の中森康弘副事務局長は「苦労はあったが、結果的には大手代理店がやっていたことと変わりない」と言う。従来は電通などに「丸投げ」だったスポンサー企業の獲得には、組織委の担当者も営業に出向いた。実務経験や人脈に乏しい中、いかに大会ロゴなどの使用権や各種商品を売り込むか。交渉には根気も要した。
組織委は大会後に解散する時限組織。幹部の一人は「電通なら他の大会を組み合わせた提案もできる。うちには次がない」と危ぶんでいた。
流した汗は報われる。組織委自身の奔走は、地元を盛り上げたい中部経済界の後押しを引き出した。徐々に知見も積み重なり、スポンサー収入は既に目標を上回る270億円前後に到達。中森氏は「地元が結束する熱が生まれた。電通主導だと冷めていた可能性がある」と話す。
◇レガシー残せるか
19年のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会の組織委企画局長などを務め、国際スポーツ大会の運営に詳しい内田南さんは、「この運営を回しきれば、すごい成果だ。いい成功例になる」とみる。
電通は早くから投資を重ねてノウハウを築いてきた一方、一社への集中や依存にはコストや透明性の問題がある。内田さんは「運営の主体が統括し、輸送や警備の実務は民間のプロに任せるとバランスがいい」と説く。
東京で開催された昨年の陸上世界選手権は財団が主導し、成功裏に終わった。今大会も試金石となり、「スペシャリストの養成を含め、人材こそレガシー。今後の大会招致や開催意義も国家戦略として考える必要がある」と内田さん。得られた知見を次代に残せるか。
【時事通信社】
〔写真説明〕愛知・名古屋アジア大会に向けた「採火式」で、聖火皿に火をかざす(左から)元女子プロテニス選手の伊達公子さん、男性アイドルグループ「INI」の後藤威尊さん、元サッカー女子日本代表の澤穂希さん=8月22日、名古屋市
〔写真説明〕愛知・名古屋アジア大会とアジアパラ大会の組織委員会で副事務局長を務める中森康弘さん=8月25日、名古屋市中区
〔写真説明〕ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会の組織委員会で企画局長などを務め、インタビューに答える内田南さん=4日、東京都千代田区
2026年09月11日 07時09分