2025年夏の参院選に向け、与野党がSNS活用の取り組みを急いでいる。24年の衆院選や注目首長選で、躍進の原動力となるケースが相次いだためだ。ただ、SNSで「バズる(広まる)」ことを意識しすぎると、「ポピュリズム(大衆迎合主義)」批判を招く可能性もあり、当面は暗中模索が続きそうだ。
24年7月の東京都知事選で、SNSを駆使した無所属新人が2位に食い込んだ。10月の衆院選も、動画配信などで「手取り増」を訴えた国民民主党が公示前から4倍増と伸長。11月の兵庫県知事選は、パワハラ疑惑で失職した前職を応援する投稿が再選を後押しした。
いずれも大方の予想を覆す結果で、与野党に「今後の選挙はSNSが決め手になる」との危機感が広がった。
自民党は12月、選挙関連サイトの運営会社代表らを講師役に、所属議員向けのオンラインセミナーを開催。公明党は新たなユーチューブ番組を始める。日本維新の会、共産党もそれぞれ専門部署を新設した。
各党が照準を定めるのは、候補や陣営と無関係の「第三者」だ。自民関係者は「衆院選の閲覧回数を分析すると、過半数は第三者の発信だった。いかにその人たちに発信してもらうかだ」と指摘する。
公明幹部は「タブーなしで刺激的なコンテンツを作る」と強調。維新幹部は「分かりやすい発信を心掛ける」と意気込む。
もっとも、SNSで注目を集めることは、そう簡単ではないようだ。「とにかく数だ。炎上する時も全く話題にならない時もあり、トライ・アンド・エラーを繰り返すしかない」。国民民主幹部は過去の取り組みをこう振り返った。
一方、立憲民主党幹部はSNS受けを狙う行為がポピュリズムにつながることを懸念。「強烈な内容ほど受けがいいから、疑問を覚えてもやるようになる。エスカレートさせるのは危険だ」と警鐘を鳴らす。
選挙関連のSNSを巡っては、偽・誤情報の拡散も問題視されている。自民が24年12月に開催した党選挙制度調査会などの合同会議では、出席者から対策を求める声が続出。逢沢一郎調査会長は記者団に、候補者と有権者の双方に配慮する必要性に言及しつつ、「新しい時代の要請に応えなければならない」と強調した。
【時事通信社】
〔写真説明〕東京都知事選で候補者の演説を聴く有権者ら=6月30日、東京都中央区
2024年12月30日 07時09分