介護離職防止へ情報提供に工夫=Vチューバー・セミナーで不安払拭



改正育児・介護休業法が4月に施行され、介護離職を防ぐための雇用環境整備が企業に義務付けられる。今年で団塊世代は全員が75歳以上の後期高齢者。働き盛り世代を中心に、社員は仕事と介護を両立できるのか不安が尽きない。企業側は支援策の拡充と併せ、制度の情報提供にも工夫を凝らし始めた。

「支援制度にはどんなものがあるか知っていますか」。画面越しに語りかけてくるのは、中性的な可愛らしいキャラクター。セガサミーホールディングスは昨年1月、社員向けにバーチャルユーチューバー(Vチューバー)を使った介護関連情報の発信を始めた。1本7分程度で、会社独自の支援や公的制度、介護にかかる費用などをテーマごとに解説する。

同社は働く場所や時間を選択できる制度などを導入した。さらに、公的支援を含めて社員が気軽に知識を広げられるようにと、Vチューバーを選んだ。キャラを演じる「中の人」も務める人財開発本部の小林優紀さんは「介護が始まる前に知識が植え付けられることで、いざという時に適切に対応でき、離職せずに済む」と説明する。

日立製作所が2023年度に行った社員調査で、介護が必要になった時に「仕事を続けられると思う」と答えた割合は42.2%にとどまった。人事担当の滝本晋理事は「いつ介護に直面してもおかしくない社員が第一線で活躍している」と離職リスクに危機感を募らせ、セミナーや相談窓口での情報提供に力を入れる。

昨年9月に同社が開いた介護セミナーには、オンラインなどを含めグループ従業員約1万2300人が参加した。親の介護と仕事の両立に奔走する社員2人が登壇し、「介護の現状を同僚と共有したり、思い通りにならなくても適度に割り切ったりすることが重要だ」などと実体験を踏まえて語った。

仕事と介護の両立支援サービスを手掛けるパソナライフケア(東京)には、4月の義務化を前に企業から社員向け相談窓口の設置や情報冊子の作成・改訂依頼が増えている。継枝綾子シニアマネージャーは「介護は個人的な事情を話す必要があり、相談のハードルが高い。社内外の制度を活用してもらう仕掛けが必要だ」と指摘する。

【時事通信社】 〔写真説明〕セガサミーホールディングスが介護情報の発信に活用しているバーチャルユーチューバー(Vチューバー)=1月、東京都品川区 〔写真説明〕仕事と介護の両立をテーマに日立製作所が開催したセミナーの様子=2024年9月(同社提供)

2025年03月18日 07時05分


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