石破茂首相が自民党議員に商品券を配布した問題を巡り、野党の足並みがそろわない。追及する方針では一致するものの、立憲民主党は内閣不信任決議案提出後の展開を読み切れず、退陣要求には慎重。日本維新の会は教育無償化など看板政策の実現を優先する構えで、国民民主党は攻勢を強めて他の2党との違いをアピールする。夏の参院選をにらんだ戦略の差を反映している。
「あらゆることを総合的に見極めなければならない。時期を簡単に言える状況にない」。立民の小川淳也幹事長は18日の記者会見で、不信任案提出についてこう述べた。
立民は野田佳彦代表が16日の段階で「退陣を簡単に求めない」と明言し、まずは首相に衆院政治倫理審査会で弁明するよう求めた。不信任案が可決されれば、首相は総辞職か衆院解散を迫られる。内閣支持率の低下を受け、「参院選は石破首相と戦いたい」との声が強いのが慎重姿勢の背景。むしろ打撃を与え続ける方が得策との判断だ。
「不信任案を出して否決される事態は避けたい」(幹部)との考えもある。少数与党の状況下、野党が一致すれば可決できるが、与党と政策協議を重ねる維新が同調するかは微妙。小川氏も「伝家の宝刀を抜く時はポーズで済まない」と述べた。
政倫審出席は国民民主の玉木雄一郎代表が15日に先陣を切って主張した。野田氏には野党側の歩調を合わせたいとの思いもあるとみられる。
立民の笠浩史国対委員長は18日、政倫審に関して記者団に「(実現するなら)予算成立後になる。出てもらうよう準備を進める」と語った。幹部の一人は「それまでは参院予算委員会で追及すればいい」と指摘した。
2025年度予算案は衆院段階で、高校授業料の無償化など維新の要求を入れて修正された。高額療養費制度の患者負担上限引き上げの凍結を踏まえた再修正案が近く参院で採決に付され、その後衆院に回付される段取りだが、維新はいずれも賛成する方針だ。
こうした状況から、予算案採決と不信任案提出が重なる展開は避けたいところ。商品券配布には厳しく臨む姿勢を示すため、前原誠司共同代表は18日の党会合で首相の政倫審出席を求めた。
国民民主は所得税課税最低ライン「年収103万円の壁」を巡る与党との協議が2月に決裂して以降、対決路線に傾いている。玉木氏は今回の問題発覚後、首相の進退にも早々に言及した。
18日の会見で玉木氏は「説明責任を果たさないなら、ちゅうちょなく不信任案を出せばいい」と強調。立民に向けて「どのタイミングや手法が選挙に有利か考え過ぎると、国民の利益を脇に置くことになる」と揺さぶりを掛けた。3党それぞれの思惑が絡み合い、立民幹部は「みんな好き勝手を言う」と頭を抱えた。
【時事通信社】
〔写真説明〕記者会見する立憲民主党の小川淳也幹事長=18日、国会内
〔写真説明〕記者会見する国民民主党の玉木雄一郎代表=18日、国会内
2025年03月19日 07時04分