政府は5日、コメの安定供給を目指して、石破茂首相をトップとする関係閣僚会議を初めて開催した。随意契約で放出した備蓄米がスーパーの店頭に並び始める中、政府一丸で取り組みをアピールする狙いがある。コメ価格の行方が夏の参院選に影響するのは必至で、価格抑制や農家への補償などの検討を加速させる方針だ。
首相は閣僚会議で「消費者に安心いただける価格でコメを提供し、生産性向上を通じて安定的な供給を実現することが必要だ」と強調した。
小泉進次郎農林水産相による矢継ぎ早の対応で、大手スーパーなどには「5キロ2000円」前後の備蓄米が出回り、5日には大手コンビニでも販売が始まった。米価が下落すれば選挙に有利に働くとみて、自民党幹部は「政府・与党一丸で小泉氏を後押しする」と意気込む。
閣僚会議では、減反廃止後も続く「事実上の生産調整」の見直しが議題となる見通し。首相は消費者の不安を払拭するためコメの増産に意欲を示す。月内に閣議決定する経済財政運営の基本指針「骨太の方針」にも「水田政策の見直しの具体化を進める」と明記する方向だ。
ただ、自民内では農林族を中心に農家の所得を直撃する米価下落への懸念は根強い。首相は価格下落に伴う農家への補填(ほてん)の必要性に言及しており、閣僚会議で具体策を詰める可能性がある。
政府・与党にとって、安価な備蓄米が消費者に行き渡り始めたことは好材料。首相は立憲民主党が内閣不信任決議案を提出した場合、採決前に衆院を解散する方向で検討するなど強気の構え。自民ベテランの一人は「野党へのけん制ではなく、解散への誘導だ」との見方を示す。
これに対し、野党は政府のこれまでの取り組みを批判。日本維新の会の前原誠司共同代表は5日の記者会見で「いま閣僚会議を行うのは遅きに失した感がある」と指摘。国民民主党の玉木雄一郎代表は党会合で「平時なのに備蓄米を何十トンも使わないといけない現状がなぜ生じているのか」と述べ、農政改革の必要性を訴えた。
石破政権の思惑通りに、コメ価格全体が下がるかどうかが今後の焦点だ。備蓄米が底を突き米価が高止まりすれば政権への反発は避けられず、コメ価格をにらんだ攻防が続きそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕コメの安定供給に関する関係閣僚会議で発言する石破茂首相(右)。左は小泉進次郎農林水産相=5日午後、首相官邸
2025年06月06日 07時03分