【ワシントン時事】トランプ米大統領が目玉政策に掲げる大型減税を盛り込んだ法案の上院採決を控え、与党共和党内であつれきが強まっている。低所得者向け医療制度であるメディケイド向け予算の大幅削減に一部が懸念を表明。だが、法案に反対する議員はトランプ氏に次の選挙で「刺客」を送ると脅され、不出馬表明に追い込まれた。
トランプ減税法案は、大型所得減税の恒久化や、飲食店従業員らが受け取るチップの税額控除など、トランプ氏の大統領選公約を網羅する。実現で自身の実績をアピールし、来秋の中間選挙で共和党の勝利につなげて政権基盤を固める狙いだ。
一方で、減税の財源確保へメディケイド向けの支出が大幅に削られることになった。メディケイドは約7000万人の低所得者や障害者ら社会的弱者に医療サービスを提供し、地域の医療機関も支える。だが、議会予算局(CBO)は大型減税が実現すれば「2034年度までに無保険者が1180万人増える」と試算する。
これを問題視したのが南部ノースカロライナ州選出のティリス上院議員。「病院や地域コミュニティー向けを含め、巨額が失われる」と法案への不支持を表明し、法案審議入りにも反対した。
だがトランプ氏は、看板政策にケチを付けられたと受け止めて激怒。「ティリス氏に対抗して選挙に出たい人は多い。今後彼らと面談する」とSNSに投稿し、ティリス氏を共和党予備選で追い落とす刺客を送り込むと示唆した。ティリス氏は29日、来年の選挙への不出馬を表明した。
共和党は上下両院とも僅差で多数派を占めるにすぎず、法案の議会通過には結束が不可欠。トランプ氏は29日、SNSで共和党議員に対し、「思い出せ、あなた方には再選が必要だ」と引き締めを図った。公約実現のために批判を封じ、造反防止に躍起になっている。
【時事通信社】
〔写真説明〕米連邦議会議事堂前でメディケイド向け予算削減に抗議する人々=23日、ワシントン(AFP時事)
2025年07月01日 07時10分