夫婦別姓、今秋の結論なるか=男女参画推進も焦点―「深掘り・日本の課題」【25参院選】



各国の男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」で、日本は今年も148カ国中118位と下位に甘んじた。あらゆる施策に女性視点を取り入れる「ジェンダー主流化」の意識は高まりつつあるが、一部の政党は男女共同参画を推進する政策の見直しを主張。賛否が交錯する選択的夫婦別姓制度の導入も、結論は今秋に見込まれる臨時国会へ先送りされ、20日投開票の参院選で争点となっている。

◇自民、賛否示さず

先の通常国会で立憲民主、国民民主両党はそれぞれ別姓制度を導入する法案、日本維新の会は旧姓の通称使用を法制化する法案を提出。28年ぶりに審議入りしたが、採決には至らなかった。

参院選公約では立民、国民のほか公明、共産、れいわ新選組、社民各党が導入を主張。ただ、推進派も一枚岩ではない。立民は、他党との連携を念頭に1996年の法制審議会(法相の諮問機関)答申に沿った法案をまとめたが、国民は距離を置いたまま。公明も、自民党への配慮から積極的な動きを見せなかった。

党内に賛否両論を抱える自民は旗幟(きし)を鮮明にせず、公約は「運用面で対応する形で不便解消に取り組む」との表現にとどめた。法案採決時の党議拘束に関し、石破茂首相(党総裁)は「(外すことも)一つの考え方だ」との認識を示している。

維新は旧姓使用への法的効力付与を掲げ、参政、日本保守両党は別姓反対を訴える。

同性婚の法制化には立民、公明、維新、共産、れいわ、社民各党が賛成。国民は公約で「同性婚の保障について検討を進める」としたが、玉木雄一郎代表は15日のインターネット番組で「慎重だ」と発言した。参政は反対を明記。自民と保守は公約で言及しなかった。

◇参・保、参画推進に異論

男女共同参画を巡っては、多くの党が女性活躍や男女間賃金格差是正を進める方針だ。自民は女性の経済的自立や「共働き・共育て」を標ぼう。立民は育児や介護などで、女性への負担偏重是正に意欲を示す。

維新と国民は女性の就業を促進するため、扶養に入る配偶者が保険料負担なしで年金を受け取れる「第3号被保険者制度」の見直しを主張。共産は労働時間短縮を「ジェンダー平等実現の柱」と位置付ける。

一方、参政の神谷宗幣代表は「女性が子どもを産みたい(と思う)社会状況をつくらないといけないのに、働け働けとやりすぎた」と男女共同参画の推進を疑問視。公約では、親子が過ごす時間を増やすために「専業主婦(主夫)等の世帯構成も選びやすくする」と記した。保守も関連支出の「抜本的見直し」を訴える。

今回の参院選で女性候補の比率は29.1%。「2025年までに35%」との政府目標は達成できなかった。国政選挙で一定数・比率を女性に割り当てる「クオータ制」には立民、公明、共産、国民、れいわ、社民が前向きだ。



◇男女参画否定に危機感

白河桃子・昭和女子大客員教授(ジェンダー)の話

日本の低いジェンダーギャップ指数は、国全体の停滞要因になっている。女性の賃金を上げていかないと、実質GDP(国内総生産)は上がらない。女性政策は「失われた30年」を打開する経済対策であり少子化対策だ。

女性活躍の旗を振りながら、男性の領域は侵さず女性にだけ負荷をかけてきた結果、女性たちは「出産は損だ」と感じている。ジェンダー平等の実現には、男性こそが変わることが最も大切だ。

若い世代ほど女性も働き、男性も育児をするという意識が高くなっている。「女性が働くから子どもを産まず、国が危機になる」という主張は間違いだ。男女共同参画を否定する風潮には危機感を感じる。

長時間労働の是正は、女性活躍と密接にリンクしており、非常に重要だ。もっと働きたい人のために労働時間の上限規制を緩めようという動きが出てきており、懸念している。男女賃金格差の是正や男性の家事・育児参加を促す観点からも関連の議論を注視したい。

【時事通信社】 〔写真説明〕選択的夫婦別姓制度の審議が行われた衆院法務委員会=6月4日、国会内

2025年07月17日 07時32分


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