
2023年に2万円台だった日経平均株価は、東証による市場改革をきっかけに、上昇基調に転じた。さらに、生成AI(人工知能)ブームを背景に関連銘柄が大きく値上がりし、相場をけん引。トランプ関税を懸念し下落する局面もあったが、高市早苗首相による積極財政への期待も加わり、日経平均は5万円台まで駆け上がった。
東証は23年3月、上場企業の価値向上を目指し、資本効率を測る指標の一つである株価純資産倍率(PBR)が1倍を下回る企業に改善を要請。PBR押し上げを狙った自社株買いが加速し、「日本企業の経営改革を期待した海外投資家が日本株に資金を振り向け始めた」(銀行系証券)という。24年2月には日経平均が3万9000円台まで上昇し、1989年以来約34年ぶりに最高値を更新した。
上場企業による自社株買いは続き、24年3月には4万円台に到達。AIの活用拡大への期待から、米国市場で半導体大手エヌビディア株などが人気となり、東京市場でも関連株が買われると、同年夏には4万2000円を超える場面もあった。
25年4月、トランプ米大統領が相互関税を課すと表明すると、世界の主要株価指数は急落した。しかし、各国の関税交渉進展とともに持ち直し、米国の利下げ期待が強まると水準を切り上げた。9月に石破茂前首相が退陣を表明すると、新政権への期待で上げ足を速め、高市氏の自民党総裁選勝利と首相就任を経て一段高となった。
「財政拡張的な政策への期待から買いを入れる『高市トレード』が、日経平均を一気に5万円の大台に押し上げた」(大手証券)形になったが、総裁選以降の日経平均の上昇幅のおよそ4割はソフトバンクグループ、アドバンテスト、東京エレクトロンの3銘柄によるもの。「昨年来のAIブームが続いているというのが実情」(投資助言会社)との指摘もある。
24年以降の株価上昇を「日本経済のデフレからインフレへの転換が底流にある」(民間シンクタンク)とみる向きもある。現金や預金はインフレにより価値が目減りするため、「企業は設備投資に、個人は消費にお金を振り向け、日本経済が成長軌道に乗る」(同)と受け止められている。今後も中長期的に株高が続くとの期待感は強い。
【時事通信社】
〔写真説明〕東証の株価を表示する大型ディスプレー=27日、東京都中央区(EPA時事)
2025年10月28日 08時15分