高市首相、安倍路線継承アピール=無難な外交デビュー



【クアラルンプール時事】高市早苗首相は26日、外交デビューとなったマレーシア訪問の日程を終えた。安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の進化を訴えて安倍路線の継承をアピールしつつ、東南アジア諸国連合(ASEAN)と関係強化を確認するなど無難なスタートを切った形だ。ただ、日本周辺の環境は険しさと複雑さを増しており、「高市外交」の難路は続きそうだ。

「FOIPを日本外交の柱に位置付け直し、時代に合わせて進化させていく」。首相は26日、クアラルンプール市内で開かれた日ASEAN首脳会議の冒頭、英語でこう宣言した。同行筋によると、会場入りした首相に各国首脳が次々に声を掛ける場面もあったという。

総務相や政調会長など政府・自民党でキャリアを積み重ねてきた首相だが、外交経験は必ずしも豊富とは言えない。安倍氏の「流儀」をよりどころとする傾向が外交面では特に強く、所信表明演説では安倍氏の口癖をまねて「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と訴えた。

こうした姿勢は人事面にも表れる。外相には第2次安倍政権最後の外相だった茂木敏充氏を起用。国家安全保障局長にはFOIP立案に携わった市川恵一前官房副長官補を、就任後1年未満の前任者を交代させる形で抜てきした。「安倍外交」を支えた秋葉剛男内閣特別顧問とも面会を重ねる。

初の外遊先も第2次政権発足後の安倍氏と同じ東南アジアだった。ASEAN諸国は高関税を振りかざして圧力を強める米国と距離ができつつあり、威圧的な姿勢を取る中国への反感も強い。国際秩序が揺らぐ中、「日本との関係強化を求める声は強い」(外務省関係者)とされ、同行筋は「初外遊がASEAN会合で良かった」と順調な滑り出しに胸をなで下ろした。

もっとも、外交週間は始まったばかりだ。首相は25日にトランプ米大統領と初の電話会談に臨んだが、帰国すればトランプ氏を日本に迎え、正式な日米首脳会談が待ち構える。トランプ氏と一定の人間関係を築き、関税交渉妥結でひとまず安定した日米関係を軌道に乗せられるかが焦点だ。

30日には韓国を訪れ、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する方向。李在明大統領と初の日韓首脳会談の調整を進めており、歴史認識などを巡る韓国側の懸念を払拭し、関係改善の流れを加速できるかが課題となる。APECには中国の習近平国家主席も出席する。対中タカ派とされる首相がどう対応するかも注目される。

【時事通信社】 〔写真説明〕東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会合に出席した高市早苗首相=26日、マレーシア・クアラルンプール(ロイター時事)

2025年10月27日 08時22分


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