
連立政権を樹立した自民党と日本維新の会が国政選挙の候補者調整に及び腰になっている。昨年の衆院選では自民・維新系の候補が155の小選挙区で競合しており、調整の難航が予想されるからだ。国政選挙で真っ向から衝突する政党間での連立維持は困難との見方もあり、連立政権の火種になりそうだ。
「まだ選挙は遠い段階にある。選挙区調整は議論もされていない」。自民の鈴木俊一幹事長は24日、党本部で記者団にこう説明。維新の藤田文武共同代表は記者会見で「呼び掛けがあれば柔軟に意見交換する」としつつ、「現時点ではノーアイデア」と慎重姿勢を崩さなかった。
昨年の衆院選では、維新が「全国政党化」を目指して積極的に擁立を進めた結果、自民候補(自民系無所属を含む)と維新候補が289選挙区中155選挙区でぶつかった。結果は自民68勝、維新19勝。「比例復活」などにより双方の候補が当選したケースも14選挙区に上った。
関係者によると、自民の高市早苗総裁と維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は連立協議に入る際、窮屈な日程も考慮し、候補者調整は当面棚上げすることを申し合わせた。しかし、高市政権が発足し、衆院解散は遠くないとの臆測もささやかれる中、候補者調整が再び課題として浮上している。
自民内からは警戒の声が上がる。象徴的なのが自民が前回擁立した15選挙区で全敗した大阪。「勝者優先」の基準で調整を進めれば自民は候補者を1人も立てられなくなるだけに、中堅議員は「連立はいつ崩れるか分からない。調整は必要ない」と言い切る。
この基準を適用すれば維新も68選挙区を自民に譲らなければならないことになり、悲願の全国政党化の断念を迫られかねない。党幹部の一人は「存在意義の問題になる」と指摘。吉村氏は22日、記者団に「選挙区調整は必ずしも必要ない。多党化の時代に入っている」と語った。
とはいえ、自民、公明両党の連立が野党時代を挟んで26年間続いた背景には、緊密な選挙協力があったとの見方は強い。自民内では「連立与党が選挙で激突することになれば未体験ゾーン。選挙後も良好な関係で政権運営できるか分からない」(関係者)と先行きを懸念する声が出ている。
【時事通信社】
〔写真説明〕連立政権樹立の合意書を交わす自民党の高市早苗総裁(右)と日本維新の会の吉村洋文代表=20日、国会内(EPA時事)
2025年10月27日 08時40分