米中はざまで対応苦心=対立飛び火、異例の国賓―韓国



【慶州時事】韓国の李在明大統領は、訪韓したトランプ米大統領を国賓待遇で迎え、強固な同盟関係を演出してみせた。だが、同じくアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて訪韓する中国の習近平国家主席も同様の扱いで接する予定だ。米中両首脳を相次いで国賓待遇でもてなす異例の対応からは、対立する大国のはざまで苦心する姿が浮かび上がる。

「国賓としての訪問が2回目となる唯一の方だ」。李氏は29日の会談冒頭でこう語り、トランプ氏を持ち上げた。慣例では、韓国の大統領らに贈られる最高級の勲章と「金の王冠」のレプリカを授与。トランプ氏は「とても光栄だ。今すぐ着けたい」と満足した様子で李氏と固く握手した。

トランプ氏は韓国に先立ち訪れた日本で高市早苗首相と会談。日本側は手厚く歓待し、首脳間の親密さを演出した。同じ米国の同盟国として比較される立場にある韓国は、トランプ氏の歓心を買うためにも、国賓扱いで迎え入れることを迫られた形だ。

だが、李氏が良好な関係の演出に腐心した背景には、対米関税交渉が難航していたことも一因とされる。韓国側のもてなしに気を良くしたのか、トランプ氏は会談冒頭、韓国高官らを「タフネゴシエーター(手ごわい交渉人)」と表現して持ち上げた。難航が伝えられていた関税交渉だったが、トランプ氏が夕食前に「合意に至った」と明らかにした。

「実用外交」を掲げる李氏は、米韓同盟や日米韓協力に重きを置きつつ、中国やロシアとの関係も安定的に「管理」する方針を取る。特に対中関係は、2017年の在韓米軍の迎撃ミサイル配備などをきっかけに冷え込んだ経緯もあり、関係修復を目指している。

しかし、中国政府は今月半ば、韓国造船大手の米国子会社5社に対し、中国との取引を禁じる制裁を科すと発表。韓国が造船分野での米国との協力をアピールする中での制裁で、米中対立が「飛び火した」(韓国メディア)との見方も強い。各国とのバランスを取る李氏の実用外交は早くも難局に直面している。

【時事通信社】 〔写真説明〕左から中国の習近平国家主席、韓国の李在明大統領、トランプ米大統領(EPA時事) 〔写真説明〕29日、韓国南東部・慶州で、「王冠」のレプリカを前に握手するトランプ米大統領(左)と李在明大統領(AFP時事)

2025年10月30日 12時41分


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