中国対日圧力、軍事分野に拡大か=首相答弁1カ月、緊張緩和見えず―中国レーダー照射



高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁から1カ月の節目に合わせるように、中国軍機がレーダーを複数の自衛隊機に断続的に照射した。日本政府内では中国が対日圧力を経済分野から軍事分野に拡大させたとの見方が出ている。日本政府は事態の沈静化を試みているが、緊張緩和の糸口は一向につかめず、関係者は懸念を強めている。

「このような事案が発生したことは、もう極めて残念だ。冷静かつ毅然(きぜん)と対応していく」。首相は7日、視察先の石川県内でレーダー照射への見解を記者団から問われ、こう語った。

自衛隊による集団的自衛権行使につながる「存立危機事態」に台湾有事がなり得ると首相が答弁したのは、ちょうど1カ月前の11月7日。それ以降、中国は答弁撤回を一貫して求め、訪日自粛を自国民に呼び掛けたり、日本産水産物の輸入を再停止したりと、日本に経済的威圧を強めてきた。

習近平国家主席は先月24日、トランプ米大統領と電話し、米中は第2次世界大戦の「勝利の成果」を共同で守るべきだと伝達。今月4日にはフランスのマクロン大統領にも「歴史の正しい側に立つべきだ」と伝え、日本をけん制した。中国外務省はSNSを駆使し、「日本の軍国主義の復活を断じて許さない」などと虚実ない交ぜの「宣伝戦」を展開している。

それでも日本政府内には、中国は2012年の尖閣諸島国有化の時ほど対日圧力を強めていないとの見方があった。しかし、国有化時と同様の自衛隊へのレーダー照射が再び確認され、「中国側は挑発行為をエスカレートさせている」(外務省関係者)と緊張感が一気に強まった。

日本政府は抑制を心掛けつつ、迅速に対応した。外務、防衛両省はそれぞれのルートで中国側に強く抗議。小泉進次郎防衛相は7日午前2時ごろ、防衛省で異例の緊急記者会見に臨み、「安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為だ」と中国側の対応を非難した。

日本政府はレーダー照射が習氏の指示に基づくものか、中国軍が習氏の意向を忖度(そんたく)した結果かなど、分析を急いでいる。首相官邸筋は「中国の対応は稚拙だ。同列になってはいけない」と冷静な対応に努める方針を強調した。

もっとも、答弁から1カ月たったが、日中関係は悪化の一途だ。親台湾派の色彩が強い高市政権と中国のパイプは細く、中国の意図を読み切れていない。防衛省関係者は「今回のような事案が続くと怖い。偶発的な衝突が予期せぬ結果につながる恐れを否定できない」と危機感を隠さなかった。

【時事通信社】 〔写真説明〕視察を終え、報道陣の取材に応じる高市早苗首相=7日午後、石川県輪島市(代表撮影)

2025年12月08日 07時01分


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