
【ワシントン時事】「1年前は死んだような国が、世界で最も熱い国となった」。トランプ米大統領は13日、中西部ミシガン州で行った演説で、米経済の力強い成長や最高値を更新し続ける株価を誇った。しかし、中・低所得層は生活コスト高に苦しみ、「アフォーダビリティー(暮らしやすさ)」を実感できずにいる。
◇富裕層の「黄金時代」
「トランプ氏は1年前の就任式で『黄金時代』を約束した。だがそれは、富裕層の黄金時代だ」。14日、首都ワシントンの米議会近くで行われた公務員労組の集会。野党民主党のバンホーレン上院議員がそう訴えると、聴衆は大きなブーイングで同調した。参加していた政府職員のポール・オサデベさん(34)は「トランプ氏は自分が好きな人々を豊かにするが、一般庶民は住まいや医療、教育の保障を失っている」と、顔を曇らせた。
米国のインフレ率はピークから大きく下がった。しかし、国民に暮らしやすくなったとの実感は乏しい。全米の医療政策調査機関「KFF」が昨年12月に公表した世論調査によると、過去1年で支払いに苦労した項目として、約3割が「家賃や住宅ローン」と「医療」を挙げた。
特に住居費が家計を圧迫している。アトランタ連邦準備銀行の調査では、昨年11月時点で米国民の収入(中央値)に占める住宅ローンと不動産関連の税、保険料の支払いの割合は43%に上った。30%を超えると負担感が大きいとされる。
今秋の中間選挙を意識し、トランプ氏は1月、SNSで、機関投資家の戸建て住宅購入禁止や、住宅ローン担保証券買い取りによる金利押し下げなど負担軽減策を矢継ぎ早に打ち出した。だが、「住宅建設が長年十分でなかった」(パウエル連邦準備制度理事会=FRB=議長)ことがコスト高の根底にあり、即効性のある対策は望めない。
15日には、薬価引き下げなどを柱とした「偉大な医療計画」をぶち上げ、医療費抑制に取り組む姿勢もアピール。もっとも、医療保険制度(オバマケア)の補助が昨年末に失効し、2000万人以上が保険料急増に直面している。全米看護師連合のウェストモアランド副委員長は医療負担増が「(政権による)人為的な危機だ」と断じた。
◇白人中間層に痛み
「暮らしやすさ」の危機は、経済格差が大きい上に、公共政策や社会保障を通じた所得再分配が脆弱(ぜいじゃく)な米社会の構造問題と言える。米シンクタンク、ブルッキングス研究所のアンドレ・ペリー上級研究員は「高等教育や医療といった分野で、他国ほどの助成が行われていない」と、個人負担の重さを指摘する。
米国のコスト高による生活苦は「新しい問題ではない」(ペリー氏)が、今回の危機では黒人や中南米系より恵まれている「白人の中間層も痛みを感じている」(同)という。痛みをきっかけに、所得再分配の見直しなど「状況は変わり得る」と、ペリー氏は語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕米議会近くで演説する野党民主党のバンホーレン上院議員=14日、ワシントン市内
〔写真説明〕演説するトランプ米大統領=13日、中西部ミシガン州(AFP時事)
2026年01月18日 07時02分