東日本大震災の発生から15年、東京電力福島第1原発事故を受けて「原発ゼロ」を掲げた政府は今、原発の「最大限活用」に突き進む。足元のエネルギー価格高騰も、その動きを後押ししそうだ。しかし、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」は停滞し、最終処分の見通しも立っていない。山積する課題に懸念は消えないままだ。
2011年3月の原発事故以降、国内の原発は一時全基停止した。当時の民主党政権は、30年代の原発稼働ゼロに向け「あらゆる政策資源を投入する」と宣言。しかし、12年末に自民・公明両党が政権に復帰すると、再稼働を進めながら原発への依存度を可能な限り低減する方針に転換した。
昨年2月に閣議決定したエネルギー基本計画では「低減」の文言も消え、建て替えや再稼働を進めて原発を最大限活用する方針を打ち出した。人工知能(AI)の普及に伴うデータセンター需要などが背景にある。
原発活用の動きは着々と進む。東京電力ホールディングスは今年1月、柏崎刈羽原発(新潟県)6号機を事故後初めて再稼働。北海道電力は泊原発3号機(泊村)の27年早期の再稼働に向け、地元同意を取り付けた。関西電力は、美浜原発(福井県美浜町)建て替えの検討に着手した。
エネルギーを巡る地政学的リスクも高まっている。米国とイスラエルによるイラン攻撃は、原油価格や火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)の急騰を招いており、経産省幹部は「(原発への期待は)当然出てくる」と指摘する。
一方、使用済み核燃料の行方は見通せない。要となる再処理工場(青森県六ケ所村)は26年度中の完成を目指すとしているが、これまで27回にわたり完成延期を繰り返してきた経緯がある。
高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場について、政府は今月、東京都小笠原村の南鳥島で「文献調査」実施を申し入れた。ただ、他の候補地の北海道寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町を含め、選定は初期段階にとどまる。
原発の代替電源として期待された再生可能エネルギーも伸び悩む。政府支援もあり、各地に大規模太陽光発電所(メガソーラー)が設置されたが、環境破壊などの批判も多く、政府は事業用の太陽光発電支援を27年度に廃止する方針。洋上風力は国内3海域で事業を予定していた三菱商事連合が撤退、再公募を余儀なくされている。
中部電力は今年1月、浜岡原発(静岡県御前崎市)の地震想定を巡るデータ不正を公表した。柏崎刈羽原発も再稼働直後に一時停止、不具合も相次ぐ。原発への信頼は今も揺さぶられ続けている。
【時事通信社】
2026年03月11日 07時04分
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