
政府は年内に予定する安全保障関連3文書の改定で、太平洋側の防衛体制強化を柱の一つに据える方針を固めた。中国の進出を踏まえ、抑止力・対処力の向上を図る。防衛省は今月、「太平洋防衛構想室」を新設。具体策の検討に本格的に着手した。
小泉進次郎防衛相は先月28日に東京都小笠原村の硫黄島を訪れた際、「太平洋側の広大な部分が防衛上の空白状態となっている」と記者団に強調。中国を念頭に「周辺国の活動活発化」に触れ、自衛隊の体制拡充を急ぐ意向を表明した。
日本の警戒監視網は、北朝鮮のミサイルの脅威と中国の東シナ海進出に対処するため、日本海側と南西諸島方面に重点を置いて整備されてきた。太平洋上には上空を常時監視するレーダーがなく、手薄となっているのが現状。部隊もわずかだ。
一方、中国は遠洋作戦能力を向上させているとみられ、太平洋での軍事活動も活発化している。台湾有事の際の米軍に対する防衛ラインに位置付けているとされるのが、小笠原諸島やグアムを結ぶ「第2列島線」。昨年6月、その付近で空母「遼寧」と「山東」が初めて同時展開し、艦載機が海上自衛隊機に異常接近する事案も起きた。
これがきっかけとなり、太平洋上の基地機能強化やレーダー網整備が喫緊の課題に浮上した。
拠点の一つが、東京都心から約1250キロ南に位置する硫黄島。現在は海自約290人、航空自衛隊約110人が常駐し、飛来する航空機への給油や訓練の後方支援に当たっている。大型船が接岸可能な桟橋の設置や戦闘機の運用を見据えた滑走路の整備などが検討されており、防衛省は調査に入る構えだ。
硫黄島東方の洋上に浮かぶ南鳥島では、地対艦ミサイルの射撃訓練場整備が既に進む。レーダーを設置したり滑走路を拡張したりする案も出ている。日本最東端の同島を巡っては、日米両政府が先の首脳会談に合わせて周辺海域のレアアース(希土類)開発に関して文書を交わした。
空自の移動式警戒管制レーダーの北大東島(沖縄県北大東村)への配備も加速しそうだ。同島は沖縄本島の東方約360キロにある。隊員30人程度が常駐する計画が村側に伝えられている。
ただ、太平洋側は拠点となる陸地が少なく、広大な海域を日本単独でカバーするには限界がある。自衛隊関係者は「米国やオーストラリア、フィリピンなど同盟・同志国の警戒監視能力を重ね合わせて抑止力を機能させるしかない」と語る。
【時事通信社】
〔写真説明〕硫黄島で取材に応じる小泉進次郎防衛相=3月28日、東京都小笠原村
2026年04月06日 06時58分