WTO、制度進化に糸口=意思決定の限界露呈も



【ロンドン時事】アフリカ中部カメルーンで先月末に開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議は、機関の意思決定構造が限界に達している現実を改めて浮き彫りにした。全会一致原則の下、電子商取引や農業などの中核議題で対立が解消できず、閣僚宣言の採択は見送られた。一方で、有志国・地域による電子商取引協定を巡る前進などは、制度の進化に向けた糸口を示した。

オコンジョイウェアラ事務局長は閉幕時、「完全な成果には届かなかったが、加盟国は前進し続ける決意を共有した」と発言。WTOが依然、交渉の中心的枠組みであると強調した。

少ないながらも得られた成果としては、過剰漁業対策の交渉継続を確認したほか、途上国支援などでも一定の合意が成立。加えて、電子商取引では有志国が、関税禁止などの暫定実施で合意。紛争解決では、機能不全に陥る上級委員会を補う代替枠組み「多国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA)」への参加も拡大した。

こうした動きは、全会一致を原則とする従来の意思決定の制約を補い、実務面での前進につながることが期待されている。電子商取引を巡る有志国の枠組みは、WTO全体で協定化に至らない場合でも、参加国が国内制度を通じて合意内容を先行実施する点で特徴的だ。一方で、有志国中心の枠組み拡大は、制度の分断につながるとの懸念もある。

今回の閣僚会議は、WTOが抱える制約と可能性を同時に示した。今後は、有志国による枠組みをいかに正式な制度に組み込むかや、紛争解決制度をどう再建するかが焦点だ。チューリヒ大のラルフ・オッサ教授(経済学)は、WTO制度について「変化する世界経済に適応し続けられることを示す必要がある」と指摘した。

【時事通信社】 〔写真説明〕世界貿易機関(WTO)の本部=3月19日、スイス・ジュネーブ(AFP時事)

2026年04月06日 06時59分


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