燃油不足で出漁制限も=旬迎え「操業のめど立たず」―中東情勢で



中東情勢の緊迫化による燃油の供給不足や価格高騰の影響が、漁業にも波及している。漁期を迎えても燃油の確保が間に合わず、出漁制限を余儀なくされた漁協からは、悲痛な声が漏れる。近海での操業にとどめて燃油を節約する船も多い。「春シラス」や「初ガツオ」漁の現場を訪ねた。

「5月いっぱいまでの操業のめどは立っていない」。シラスが旬を迎えた和歌山県有田市の有田箕島漁協で、尾藤勝徳組合長は気をもむ。重油の在庫はタンクの6分の1程度まで減ったが、次回の調達でも十分な量は確保できない見込みだ。

すでに4月から、通常は週に4日のシラス漁を2日に、底引き網漁も5日から2日に減らしている。橋中秀幸副組合長は「今はものすごくいい時期。毎日でも行きたい」と悔しさをにじませる。

ふんわりとした食感が特徴という、この時期の取れたてのシラスを求めてにぎわうはずの漁協直営の市場も、休漁日は人がまばら。近隣で出漁日限定の生しらす丼を提供する店も、客足への影響を受けかねない。

静岡市の清水漁協用宗支所でも、シラス漁の出漁数を半減し、例年より港の停泊船が増えた。沖合まで行かずにエンジンの回転数を抑えながら漁をして、使用する軽油の温存に努める。出漁制限に伴い、取ったシラスを組合員で分け合う「プール制」も導入した。

軽油の在庫は1~2カ月分あるが、1リットル当たり約30~40円の値上げが重くのしかかる。増田新支所長は、「漁師は高く売りたいが、仲買人も資材が値上がりしていて安く仕入れたがっている」と価格転嫁の難しさを指摘。ガソリンと販売経路が異なる重油や軽油では、国の補助金による価格抑制効果が反映にしくいケースもみられる。漁師からは「なぜガソリンのように安くならないのか」と声が上がっているという。

近海カツオ一本釣りで有名な宮崎県日南市の南郷漁協でも、漁を工夫し重油の高騰をしのいでいる。通常通り1週間かけて遠い漁場までカツオを追えば重油を多く消費するため、早めに切り上げて燃料を節約。量より鮮度を優先することで、1匹当たりの単価を向上させる船もあるという。

ただ、カツオの北上に合わせ、時期によって沖縄県周辺から宮城県周辺まで漁場を探すため、1隻当たりの重油代は年間約1億円に上る。国の補助金があっても重油は約20%値上がりしており、負担は大きい。市元秀人参事は、事態が長期化し廃業者が出ることを危惧。「もう少し補助金をプラスしてもらえると助かる」と訴えた。

【時事通信社】 〔写真説明〕取材に応じる有田箕島協同組合の橋中秀幸副組合長=17日、和歌山県有田市 〔写真説明〕出漁制限をしている有田箕島漁業協同組合管内のシラス漁で使われる船=17日、和歌山県有田市 〔写真説明〕燃料タンクの位置を地図で説明する静岡県の清水漁協用宗支所の増田新支所長=15日、静岡市 〔写真説明〕南郷漁協所属の近海カツオ一本釣り漁船の母港である目井津港=14日、宮崎県日南市

2026年04月21日 07時25分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース