
高市早苗首相の陣営が昨年の自民党総裁選や今年の衆院選で他候補を中傷する動画をSNSに投稿していたとする週刊文春の報道が、政権の火種になりつつある。首相は繰り返し否定しているが、秘書と動画作成者のオンライン会議の記録とされる音声データも公開され、弁明は苦しさを増す。中道改革連合などは秘書らの国会招致を求め、攻勢を強めている。
「昨夜遅くに(音声を)確認した。秘書とされる音声は私と会話しているときより、かなり高い声で、はきはきとしゃべっていたので違和感があった」。首相は5日の参院予算委員会で、文春電子版が公開した音声を聴いたとしつつ、本物の記録かどうか疑問視してみせた。
ただ、立憲民主党議員に、事実と異なるなら文春に抗議してはどうかと詰められると、「私は国家経営に取り組んでいる。そういうことに時間を使っている暇はない」と苦しさをにじませた。
文春が疑惑を報じたのは4月29日。首相の秘書が動画作成者とされる男性と話し合い、他候補を中傷する動画をSNSで流布したとする内容だった。以来、首相は「ないものはない」と強気の答弁を続けているが、続報が相次いで報じられ、「泥沼に足を取られつつある」(自民関係者)。
首相の発言はこの間、少しずつ変遷している。当初は男性を「私も秘書も面識のない方」としていたが、男性がインターネット番組「NoBorder
News」で、秘書とはオンラインで連絡を取っていたと証言すると、「私も秘書も会ったことがない方」と微妙に表現を変えた。
文春電子版は今月3日、昨年12月のオンライン会議の様子とされる音声を公表。秘書の声か確認するよう中道の衆院議員から求められたのに対し、首相は4日の衆院予算委で「質問通告を見たのはけさ方3時半ぐらい」「(確認のために)有料会員になろうと思わない」と拒んでいたが、中道から文春の許可を得たとして音声を提供されると、聴かざるを得なくなった。
「声が不自然」などとする首相の答弁を受け、立民は5日、秘書と動画作成者の参考人招致を要求。中道の小川淳也代表は記者会見で「(説明には)説得力がない。首相の指導者としての資質の問題になりつつある」と語った。
月内には衆参両院予算委の集中審議、7月には党首討論が見込まれており、中道などは会期末の同月17日に向けて追及を続ける構え。沈静化の見通しは立っておらず、自民党関係者は「普段は歯切れのいい首相が、らしくない答弁を重ねている。支持率に響くだろう」と頭を抱えた。
【時事通信社】
〔写真説明〕参院予算委員会で質問を聞く高市早苗首相=5日午前、国会内
2026年06月06日 07時09分