中小企業、価格転嫁に懸念=3年連続で50円以上―最低賃金目安、「春闘」下回る



今年度の最低賃金改定額の目安が28日、55円に決まった。今春闘での高い賃上げ結果や物価高を反映、過去最大となった昨年度(63円)には及ばないものの、3年連続で50円以上となった。ただ、原材料費などコストの上昇が続き、価格転嫁も進んでいない。原資を確保できるのか、中小企業の懸念は深い。

◇際立った相違

「主張が十分に反映されずに取りまとめられた」。中央最低賃金審議会の労働者側委員は、目安の取りまとめに当たってこう不満を表明した。小委員会で労働者側は、昨年度を上回る75円の目安額を提示したが、今春闘での賃上げ率5.01%も下回る4.9%の引き上げにとどまった。

一方、経営者側は、労働者側の要求は消費者物価指数など根拠に乏しく「高すぎる」と主張。中東情勢悪化に伴う企業経営への影響などを慎重に見極めるべきだと訴え続けた。

この間、政府は「2020年代に全国平均1500円」の最低賃金を目指すとした目標を事実上先送り。政府の勢いが「トーンダウン」(自民党議員)し、スムーズな議論も予想されたが、労使の溝は埋まらず、小委員会も当初予定の4回から2回延長された。

◇「資金が枯渇」

最低賃金増額は、企業にとってはコスト要因になる。「資金が枯渇しエアコンも購入できない」と嘆くのは関東地方の自動車部品メーカー。取引先が価格転嫁に応ぜず、資金繰りが悪化しているという。経営者は「最低賃金(を守るの)は企業の義務。転嫁できないのはおかしい」と憤る。

中小企業庁によると、今年3月時点の価格転嫁率は54.2%で、昨年9月(53.5%)からの進捗(しんちょく)はごくわずか。政府は今年1月、発注者に受注者との価格交渉を義務付ける「中小受託取引適正化法」を施行したが、発注者側の理解は進んでいない。

日本商工会議所の調査では、今年度賃上げを実施する企業は、予定を含め7割超に上ったが、その6割は業績が改善していないのに行う「防衛的賃上げ」だ。先の経営者は「政府は(価格転嫁に)しっかり目を配ってほしい」と訴える。

◇既に引き上げ圧力も

今後は各都道府県ごとの議論に焦点が移る。昨年度は低賃金を理由に人材が流出する懸念から、目安を大幅に上回る例が相次いだ。企業の準備期間を確保するため、例年10月の発効日を遅らせるケースも目立ち、「生活水準の改善が進まない」(労組幹部)と懸念する声も上がった。

中央審議会は今年6月、発効日を遅らせる場合は「必要性を十分議論」するよう要請。過度な地域間競争で実態とかけ離れた水準に引き上げることも「適切ではない」として是正を図った。しかし一部地方では、「最下位」の不名誉を避けようと、早くも「引き上げ圧力」が強まりつつある。

【時事通信社】

2026年07月29日 07時08分

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