満州の記憶、動画で次代へ=Vチューバーの83歳女性―幼少期に引き揚げ・金沢



旧満州(中国東北部)生まれで、幼少期に日本へ引き揚げた麻井紅仁子さん(83)=金沢市=は、3年前からバーチャルユーチューバー(Vチューバー)として旧満州での体験を発信している。戦争や引き揚げの記憶の風化が課題となる中、動画を通じて次世代への継承を目指す。

麻井さんは、眼鏡を掛けたネコのキャラクター「満州ばあちゃん」として、動画を自身のチャンネルに投稿する。家族から聞いた話や文献を基に、旧満州の歴史や引き揚げの体験談などを紹介しており、資料作成から撮影までを一人でこなす。

麻井さんは1943年5月、旧満州の錦州省で8人きょうだいの末っ子として生まれた。父が召集された終戦間際、旧ソ連軍侵攻のうわさが広がり、暴徒化した人々が日本人居住区に押し寄せた。母は万一に備え包丁を身に付け、「お母さんの判断で家族全員で死ぬ」と伝えていたという。

終戦後の46年5月、3歳の時に姉に背負われ博多港に引き揚げた。その後、一家で列車に乗り、母方の遠縁がいるとみられた石川県能登半島を目指し、最終的には金沢市で暮らすことになった。

自分のルーツを知ろうと旧満州に関する本を読んでいた17歳の時、引き揚げ途中に強盗団に襲われ、軟禁された女性らがいたことを知った。あまりの悲惨さに最後まで読めず、以降は距離を置くようになった。

転機は約5年前。知人を通じ、旧満州の体験を語り継ぐ団体と縁ができた。その団体を通じて知り合った大学生と金沢市内の闇市について調べる中、両親が身寄りのない引き揚げ者らの居場所として金沢駅前で飲食店「満州屋」を営んでいたことを知った。両親の思いに触れ、旧満州について学び直した。

その後、語り部活動などに取り組む一方、若者への伝え方を模索した。ある日、近所のグラフィックデザイナーの友人に相談すると、Vチューバーを勧められた。撮影方法の支援を受け、3年前から動画投稿を始めた。

両親を亡くした残留孤児、逃避行の末に集団自決した人々、旧ソ連兵から暴行を受けた女性たち。引き揚げ者の手記などを基に、こうした体験や歴史を伝える動画を140本以上投稿してきた。

旧満州で起きた出来事と向き合い、心を痛めることもある。ただ、動画に寄せられる視聴者のコメントなどに励まされてもいるという。「見た人の心が少しでも動き、次の世代へ伝えてくれたら」と願い投稿を続ける。

【時事通信社】 〔写真説明〕旧満州(中国東北部)での戦争体験などを伝えるVチューバー「満州ばあちゃん」の投稿動画(満州ばあちゃん提供)

2026年08月13日 14時30分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース