
龍谷大と国文学研究資料館などの研究チームは17日、江戸時代から明治時代の古書(和本)から採取した毛髪を分析し、当時の都市庶民の食生活を明らかにしたと発表した。米と海産物中心で質素ではあったが、カルシウム、鉄、マンガンなどの毛髪中濃度は高く、現代人よりもミネラル豊富な食生活だったという。論文は、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
江戸時代の都市では、古紙の回収と再利用が行われており、和本でも表紙に使う再生紙から毛髪が見つかることが多いという。
龍谷大の丸山敦教授と国文研の入口敦志教授らは、同大所蔵の約7万冊の和本のうち出版元や年代が特定できる約400冊から毛髪を採取。ほとんどは今の京都、大阪、東京で印刷されていた。年代は17世紀半ばから19世紀末で、毛髪は各時期に都市で生活する庶民のものと推定された。
研究チームは粒子線による微量元素の測定や安定同位体分析を実施した。その結果、塩素、カリウム、カルシウム、マンガン、鉄、銅など、人体に必須なミネラル元素の毛髪中濃度が現代人より高い一方、豚肉に多い亜鉛は現代人より低かった。炭素と窒素の同位体分析からは、米と海産魚に依存する食生活が裏付けられた。
ミネラルのうち、玄米に多いカリウムやケイ素は時代を下るにつれ減少。白米を食べる習慣の広がりと一致していた。一方、減少しなかったマンガンやカルシウム、鉄、銅などは海産魚に多く、物流の発達に伴う魚の摂取量増加や、魚粉肥料の普及などが考えられるという。
もともと魚類や両生類の食性を研究していた丸山教授は「学生に研究内容を理解してもらうための『遊び』」として、毛髪からの食生活推定を試していた。知り合いの研究者が「和本から毛髪が出る」という話を入口教授から聞き、引き合わせたのがきっかけという。
丸山教授は「江戸時代の食事は質素と言われているが、ミネラルは現代人より多い。いくつかは日本人に不足すると言われる元素。何を食べたらいいかのヒントが隠れている」と話した。
【時事通信社】
〔写真説明〕研究対象の毛髪が採取された和本(丸山敦・龍谷大教授提供)
〔写真説明〕古紙再生の過程で毛髪が入った紙(丸山敦・龍谷大教授提供)
2026年08月17日 18時10分