
【カイロ時事】イエメンの親イラン武装組織フーシ派が、紅海沿岸や海上輸送の要衝バベルマンデブ海峡一帯で支配地域を急速に広げている。封鎖したホルムズ海峡に加え、原油輸送の代替経路としての重要性が増したバベルマンデブ海峡でもイラン側が影響力を強めており、エネルギー供給や物流への新たな脅威となりつつある。
イエメン情勢は7月、フーシ派が実効支配する首都サヌアの空港を、対立するサウジアラビアが空爆したことで一気に悪化。フーシ派はサウジ船舶の「海上封鎖」を宣言し、衝突へと発展した。
攻撃の応酬が続く中、フーシ派は今月10日に紅海に面する港湾都市モカ、翌11日にバベルマンデブ海峡のペリム島を次々と制圧したと伝えられた。幅が30キロ程度しかない同海峡で、船舶の監視や攻撃が容易となる陣地を確保した形だ。
フーシ派は中東各地でイランが支援する代理勢力の一翼を担う。一方、イエメンでは国民の約8割を支配下に置く「事実上の統治者」としての顔も持ち、イランの影響下でも独自の判断で行動することもある。
今回の電撃作戦について、サウジの国際政治アナリストのアシュク・サイダン氏は「イランとフーシ派双方に動機がある」と分析する。米国との戦闘終結に向けた協議の再開が見通せず、経済的な締め付けが続く中、イランが紛争拡大で新たな危機を生み出し、米国に圧力をかける手段を得る狙いがあると指摘。フーシ派には、サウジをけん制しつつ、統治者としての正当性を認めない国際社会に実力を示し、今後の「交渉材料」とする思惑もあるとの見方を示した。
米メディアによると、サウジの事実上の最高権力者ムハンマド皇太子は10日、トランプ米大統領にフーシ派への攻撃に参加するよう要請したが断られた。11月に中間選挙を控え、トランプ氏はさらなる軍事行動は避けたい考えとみられる。
米国が動きづらい状況下で、ホルムズ海峡に続き、イランが新たな「海峡支配」に乗り出した可能性もある。フーシ派の報道官は「サウジ以外の船舶の航行は安全だ」と主張する。しかし、海峡への影響力行使が、外交や軍事行動を優位に進める上での「切り札」となっており、中東情勢が一層複雑化することは必至だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕イエメン南西部の港湾都市モカで、同国の親イラン武装組織フーシ派戦闘員を撮影したとされる画像(11日にフーシ派系テレビが配信した映像より)(AFP時事)
2026年09月12日 20時33分