量子と宇宙、成長の柱に=「基礎研究の蓄積結実」―フィンランド経済相



【ヘルシンキ時事】フィンランドのサカリ・プイスト経済相は7日までに時事通信などのインタビューに応じ、量子・宇宙分野で「60年にわたる基礎研究の蓄積が実を結びつつある」と述べ、両分野を国家の成長の柱に据える考えを示した。

フィンランドでは、量子計算に不可欠な低温物理学の研究が1960年代から続く。こうした基盤を背景に産業化が進み、量子分野の国内企業は約200社に拡大。量子コンピューター用の極低温冷却装置で大きな市場シェアを占めるブルーフォースや、研究機関や企業向けに量子コンピューターを提供するIQMなど、国際的な企業が育った。プイスト氏は「大学や研究所の成果がようやく産業に転化し始めた」と指摘した。

宇宙関連でも有望な企業が台頭している。悪天候や夜間でも観測可能な衛星を手掛ける新興企業ICEYEは、これまでに60基以上の小型衛星を打ち上げた。プイスト氏は「10年前には(関連企業は)ほとんど存在しなかったが、この5年でエコシステム(生態系)が形成された」と胸を張る。

飛躍の背景には、官民問わず幅広く支援する政府系機関の存在に加え、研究開発費を2030年までに国内総生産(GDP)比4%に引き上げる国家目標がある。現状でも3%強と世界上位だが、プイスト氏は「トップ3を狙う」と意気込む。

ただ、フィンランドはEUの財政規律基準を上回るGDP比4%超の赤字を抱えるなど、財政状況は厳しい。それでもプイスト氏は「戦略分野への投資は継続する」と述べ、優位性のある産業を伸ばすことが国益につながると訴えた。



◇サカリ・プイスト氏略歴

サカリ・プイスト氏

2004年、英ケンブリッジ大で物理学博士号を取得。大学や民間企業での勤務を経て、19年にフィンランド国会議員に初当選。経済委員会委員長などを歴任し、25年6月から経済相。南部タンペレ出身。48歳。

〔写真説明〕インタビューに答えるフィンランドのサカリ・プイスト経済相=2日、ヘルシンキ

2025年12月09日 19時11分


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