終盤国会の攻防火ぶた=補正・定数巡り駆け引き激化



2025年度補正予算案が8日、衆院で審議入りし、終盤国会の与野党攻防の火ぶたが切られた。参院で過半数割れが続く与党は、予算案成立を目指して野党と連携を模索。立憲民主党は「放漫財政」と批判を強めて高市政権との対立軸をアピールする。国民民主党は賛成をちらつかせて政府・与党に譲歩を迫り、公明党は路線に揺れる。会期末の17日をにらんで駆け引きが激化しそうだ。

「一緒に関所を乗り越えていけるよう取り組みたい」。高市早苗首相は8日の衆院本会議で、所得税の課税最低ライン「年収の壁」引き上げを国民民主から求められ、こう秋波を送った。

首相が柔軟な姿勢を見せるのは、野党の一部の協力を得なければ予算案成立すらおぼつかないからだ。衆院では過半数をぎりぎりで回復したが、自民党幹部は「病欠が1人出ただけで過半数割れ」と危機感を募らせる。参院では過半数になお6議席足りない状況が続く。

立民は高支持率の高市内閣に一矢報いようと対決姿勢を強める。8日の衆院本会議では安住淳幹事長が登壇し、補正予算案提出が12月にずれ込んだことを「遅すぎる。党内政局に時間を使い、国民の苦しみを放置した責任は極めて重い」と厳しく批判した。

立民は補正予算案の組み替え動議を公明と共同提出することを目指している。高市政権との違いを鮮明にし、連立政権離脱から間もない公明を「反自民」陣営に引き寄せる狙いからだ。

国民民主の戦略は対照的だ。維新の連立入りで発言力が薄れつつあると危機感を強めており、「年収の壁」引き上げの実現による存在感アピールを狙う。岸田光広氏は8日の衆院本会議で、首相が好んで使う「底力」を使い「この国の底力を信じ、政治を共に進めよう」と協調を呼び掛けた。

首相は公明との連携も探る。8日の衆院本会議では「(補正予算案には)公明党の提言を受け、1人2万円の子育て応援手当を盛り込んだ」と強調した。しかし、公明は自民に不信感を募らせており、中堅議員は「協力できるわけがない」と語る。ただ、党内には立民が目指す「中道連合」にかじを切ることをためらう空気もあり、党幹部は「採決ではフリーハンドだ」と語った。

終盤国会では衆院議員定数削減法案が波乱の種だ。維新に迫られ、自民は法案を5日に提出したが、国民民主、公明両党を含む野党6党・会派は8日、衆院政治改革特別委員会への法案付託は現状では認められないとの認識で一致し、「時間切れ」を狙う姿勢を鮮明にした。

仮に付託や採決を強行すれば、最優先課題である補正予算案の審議に影響が及びかねない。しかし、維新からは「法案が成立しなければ連立離脱だ」(ベテラン)と突き上げを食う。自民幹部は「補正予算案も法案も成立させるには会期延長しかないかもしれない」と漏らした。

【時事通信社】 〔写真説明〕衆院本会議に出席する高市早苗首相(右端)と質問に臨む立憲民主党の安住淳幹事長(手前)=8日午後、国会内 〔写真説明〕衆院本会議で、立憲民主党の安住淳幹事長の代表質問に答える高市早苗首相=8日午後、国会内

2025年12月09日 07時04分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース