
【ワシントン時事】「米史上最大の減税の劇的な効果をこれから目の当たりにする」。トランプ大統領は19日、南部ノースカロライナ州での演説で、大型減税による税還付の本格化が今後、支持率アップにつながることに期待を示した。一方、国内総生産(GDP)比でほぼ100%に達した債務を圧縮する道筋は見えない。税制専門家からは、減税ではなく消費税導入など増税こそ必要だとの声も上がる。
国際通貨基金(IMF)のデータによると、米国の税収など政府収入の対GDP比率は2024年で29.9%。高負担で手厚い社会福祉を実現する欧州諸国の40~60%、日本の37.6%を大きく下回った。米有力シンクタンク、ブルッキングス研究所のシニアフェロー、ウィリアム・ゲール氏は、財政再建には「増税をより多く、歳出削減をより少なくすべきだ」との見解を示す。
米国には連邦レベルでの付加価値税(消費税)がない。ゲール氏は日欧などと比べ、「消費税とエネルギー課税が特に低い水準にある」と指摘。「税優遇措置などを終了し、(消費税導入で)課税基盤を広げることが、税率引き上げよりも税収を増やす効果的なやり方だ」と訴えた。
議会予算局(CBO)の試算では、7月に成立した大型減税関連法の影響で、米財政赤字は34年度までに従来想定よりも3兆4000億ドル(約530兆円)増える。ゲール氏は第2次トランプ政権の4年間で財政状況は「悪化し続ける」と予想。特にホワイトハウスと上下両院の多数派を同じ政党が占める現状では「財政赤字の問題は二の次となり、政権の最大の関心事はやりたい政策になる」と話した。
来秋の中間選挙に向け、トランプ氏は関税収入増を当てにした「現金ばらまき」の意向を口にする。ゲール氏は、政権が関税を恒久的な財源と見なす一方で、貿易交渉の「道具」とする状況を疑問視。「どちらか一つなら可能だが、二兎(にと)は追えない」と語った。
〔写真説明〕インタビューに応じる米シンクタンク、ブルッキングス研究所のウィリアム・ゲール氏=4日、ワシントン
2025年12月29日 07時04分