【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、トランプ政権による刑事捜査を「脅しと圧力」と明言し、断固として闘う姿勢を示した。議長交代を控えてFRBの独立性が揺らぎ、金融政策で最も重要な信認が損なわれる事態に対する強い危機感がうかがえる。
検察当局が刑事捜査に乗り出したとの報道とほぼ同時に、FRBはパウエル氏のビデオ声明を公表。同氏は、FRB本部改修工事に関する自身の議会証言を問題視するのは「口実」でしかなく、刑事捜査はトランプ大統領の大幅利下げ要求にFRBが従わず、「最善の精査に基づいて金利を決定した結果だ」と言い切った。
パウエル氏はこれまで、トランプ氏の露骨な利下げ要求や「まぬけ」といった罵詈(ばり)雑言にも立ち入ったコメントはせず、静観してきた。それだけに、今回の脅しに屈しない姿勢は深刻な懸念の裏返しと言える。
米経済は今、微妙な局面に差し掛かっている。成長が加速する中、トランプ政権の高関税政策の影響でインフレ率がFRB目標の2%を上回る一方、雇用の伸びは鈍化。今秋の中間選挙を控え、株高と高成長の維持を狙うトランプ氏の意に沿って過度な利下げに応じれば、景気とインフレを過熱させかねない。
パウエル氏は5月に議長の任期を終える。トランプ氏は利下げに前向きな人物を後任に据える意向を隠さず、昨年末には「私に反対する者は決して議長になれない」とSNSに投稿した。次期議長の下で、FRBは独立性を巡って、ここ数十年で最大の正念場を迎えそうだ。
パウエル氏のFRB理事としての任期は2028年1月末まで残る。金融政策の掌握を狙うトランプ氏のなりふり構わぬ圧力を前に、パウエル氏が議長退任後も理事にとどまる可能性も取り沙汰され始めた。
2026年01月12日 19時08分
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