企業統治、問われる「質」の改革=5年ぶり指針改訂、「骨抜き」批判も



金融庁と東京証券取引所は7月、持続的な成長に向け上場企業が取るべき行動を示した企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を、5年ぶりに改訂した。この間、東証プライム市場の上場企業では、独立社外取締役が取締役会の3分の1以上を占める企業が6割から約99%に増えるなど形式的にはガバナンスは改善した。一方、新たな指針が企業に求めるのは「質」の改革だ。

新たな指針は83項目あった原則を30項目に縮小した。簡略化した半面、「株主との建設的な対話」を重視し、企業には経営判断について株主への丁寧な説明を求めている。日本総研の山田英司経営研究センター長は「企業が自分の言葉でより深く考えなければならなくなった」と話す。

独立社外取締役については数をそろえるだけでなく、持続的な成長などに寄与できる「資質」の確保を要請。取締役会の責務として、現預金などの経営資源が成長投資に有効活用できているかを不断に検証するよう求めた。日本取引所グループの山道裕己最高経営責任者は「経営資源を使って成長をどう実現するか、その道筋を示して投資家と対話することが重要だ」と説明する。

ただ、投資家からは「骨抜き」との批判も出る。当初は「現預金を投資等に有効活用できているか」の検証を求める表現だったが、経済界の要望を踏まえ、より広範な概念の「経営資源」の検証に修正。山田氏は「現預金について詳細な説明・開示を求める海外の機関投資家と経営側ではかなり温度差がある」と指摘する。

機関投資家の要請が強かった有価証券報告書の開示時期の前倒しについては、総会の3週間以上前の開示が「最も望ましい」と明記された。有報は投資家が議決権行使するための重要な情報源だが、企業の負担は増える。三菱UFJ信託銀行によると、今年6月の株主総会で事前に有報を開示した上場企業は9割弱に上ったが、その半数は総会の前日で、指針が求める水準にはほど遠い。

早稲田大学の黒沼悦郎教授は新たな指針の内容について、「足踏みしている気がする」との見方を示した。その上で「議決権行使によって会社を変えることが重要で、その効果が発揮できるようになるのが望ましい」と強調した。

〔写真説明〕東京・新宿副都心に林立する高層ビル=資料(EPA時事)

2026年08月07日 07時39分


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