NHK連続テレビ小説「ブギウギ」で一躍注目された女性だけのレビュー劇団「OSK日本歌劇団」。8月7~11日に東京・新橋演舞場で上演する「レビュー夏のおどり」は、トップスター楊琳と娘役トップスター舞美りらのラストステージとなる。OSKは「人生のすべて」と話す楊と、「夢をかなえてくれた場所」と語る舞美に、退団を前にした今の思いを聞いた。
「ブギウギ」で描かれた梅丸少女歌劇団のモデルは、1922年に創設された、OSKの前身の松竹楽劇部。「ブギの女王」として一世を風靡(ふうび)した笠置シヅ子や、数々の名作映画に主演した京マチ子らが輩出し、戦争や労働争議、解散などの危機を乗り越えながら長い歴史を刻んできた。
楊と舞美は2021年から3年にわたり、それぞれ男役、娘役のトップとして「劇団の顔」を務め、一昨年の100周年の節目も経験した。特に楊は、OSKが03年にいったん解散し、存続に向けた摸索が続く時期に劇団の養成所に入っただけに、「たくさんの皆さまが私たちを愛してくださった結果。今の立場で100周年を迎えられたのはすごい運命だなと感じますが、これを必ず次につなげていかなければならないと、改めて覚悟を決めた時期でした」と振り返る。
楊は横浜市出身。華麗なダンスに定評があり、「ナチュラルな男役」を目指してきたという。「もともと女性だから、男性になる必要はない。女性が演じる男性の良さは何だろうとか、どうしたらお客さまの心にスッと入っていけるかを考えました。かわいく、きれいであり、男らしくもある中性的な男役。所作を含め、とことん美しくあるようにと思いました」
一方、舞美は京都市出身で13年に入団し、芸名通りに「ダンスのOSK」を体現してきた。OSKの娘役はパワフルさが魅力だ。「一番の誉め言葉は『OSKの娘役さんだね』と言っていただくこと。美しさや、かわいらしさだけでなく、憎らしさや怒りも深めた魅力的な人でありたい」と、こだわってきた。
「ブギウギ」には、笠置シヅ子をモデルにしたヒロイン(趣里)の先輩役を演じた男役スター・翼和希をはじめ、OSKの劇団員も出演し、ドラマが放送中だった昨年秋の京都・南座公演は連日の大入り。OSKを初めて見る観客が半数以上を占めたという。楊自身も「知識として知っていた劇団の歴史を立体的に見て追体験する素晴らしい機会を頂きました」と喜ぶ。
OSKは、「パワフルさ、生命力の強さ、情熱があり、夢の世界だけど、ちょっと人間臭く現実的なところが魅力」と楊。舞美も「たくさんの苦難を乗り越えてきている劇団だからこそ表現できるものがある。見終わった時に、スカッとして清々しく、晴れやかな気持ちになっていただけたら」と話し、後輩たちには「ダンスのOSKを守っていってほしい」と思いを託す。
「夏のおどり」は和物レビュー「春楊桜錦絵(やなぎにはなはるのにしきえ)」と、洋物レビュー「BAILA
BAILA
BAILA」の2本立て。4月に大阪松竹座で上演された舞台をさらに練り上げる。スペイン語で「踊れ、踊れ、踊れ」を意味するタイトルの洋物レビューでは、「ブギウギ」に登場したレビューシーンの再現もある。
楊は「誠心誠意、全力、全身で最高の舞台をお届けするので楽しみにしていてください」と意気込み、舞美は「題名の通り踊りまくる舞美を、そして楊琳さん、出演者のみんなを見ていただけたら」と呼び掛けた。(時事通信社・中村正子)
〔写真説明〕「OSKの魅力は情熱」と口をそろえる楊琳(右)と舞美りら=東京
〔写真説明〕「レビュー夏のおどり」に出演する(左から)翼和希、千咲えみ、楊琳、舞美りら、華月奏=東京
2024年07月26日 18時37分