
北海道釧路市の阿寒湖ほとりに、アイヌの工芸技術を後世につなぐ施設がある。2024年5月にオープンした「阿寒アイヌクラフトセンター・ハリキキ」だ。次世代の職人を育成する拠点には道内外から若者らが集まり、地元職人から彫刻や刺しゅうの指導を受ける。今月末には、1期生が巣立つ予定だ。
「ハリキキ」は、アイヌ語で「よく働く、努力する」を意味する。施設では現在、24年入校の1期生4人と25年入校の2期生4人の計8人が週5日の研修に励む。研修生は2年にわたり、ムックリ(口琴)やマキリ(小刀)、刺しゅうの作り方を習得する。アイヌの言葉や歴史も学び、文化伝承者としての教養も身に付けてもらう。
「阿寒の職人と肩を並べられる作品を作りたい」。卒業を控え、アイヌ文様が刻まれた木彫り刀の制作に取り組む1期生の大和田秋之助さん(24)は力を込める。祖父は工芸品の店舗が立ち並ぶ阿寒湖アイヌコタン(集落)で木彫りのアクセサリーなどを作り、店を経営している。
大和田さんはアイヌの血を引くが、「もともとアイヌ文化に強い関心があったわけではない」と話す。ただ、「祖父の店が将来なくなってしまうのが嫌だ」と考えて入校した。
大和田さんの言葉の背景には、阿寒湖アイヌコタンを支える職人の高齢化がある。釧路市によると、職人の大半が60代以上で、最も若い人でも40代。進学や就職を機に地元を離れる若者が多く、伝統的な工芸技術の継承方法が課題となっている。
市の担当者は「ハリキキ」について、「工芸店舗の経営者として阿寒に定住する技術者を増やすことを見据えている」と説明。市は研修生に対し、月約20万円の奨励金を交付するほか、店舗経営や金融に関する授業を組み込むなどして文化継承に力を入れる。
こうした支援を背に、ハリキキでは3月末に1期生4人が巣立つ。「木彫りを教えてもらう時、先生からは『俺も先代からこう教わったんだ』とよく言われるんです」と話す大和田さん。卒業後は祖父の店で経験を積むといい、「将来は店を継ぐことが目標」と意気込んでいる。
〔写真説明〕自作の木彫りの横に立つ「阿寒アイヌクラフトセンター・ハリキキ」研修生の大和田秋之助さん=1月22日、北海道釧路市
2026年03月22日 07時01分