
知床観光船「KAZU
I(カズワン)」の沈没事故では、ずさんな運航実態や国の監督体制の不備が浮かび上がった。国土交通省は安全対策を設け、事業者の監視を強めているが、沖縄・辺野古沖で国への登録がない船の転覆事故が起きるなど、海の安全に向けた模索は続いている。
カズワン事故直後、国交省の特別監査で、運航会社「知床遊覧船」社長の桂田精一被告が、船の安全を統括する運航管理者の要件である「3年以上の実務経験」がないのに選任されていたことが判明。同社は虚偽申告をしていたが、北海道運輸局は裏付けを取らずに受理していた。
国交省は2022年12月に取りまとめた全66項目の安全対策で、運航管理者などの資格者制度を導入。資格取得には海事知識などを問う試験への合格が必須になるほか、2年ごとの資格更新時には講習を受けることが求められる。
船体の検査や事業者の監査体制も強化。カズワン沈没は、船首部ハッチが閉まらない不具合により浸水したことが直接的な原因とされる。国の検査代行機関「日本小型船舶検査機構」(JCI)が事故3日前に不具合を見逃していたことを踏まえ、国が検査現場を総点検するなど、検査の実効性確保に向けた見直しも行われた。
地方運輸局の監査官増員により、近年の監査件数は増加。24年8月、JR九州子会社の高速船「クイーンビートル」の浸水隠し発覚に結び付いた。国交省幹部は「まだ道半ば。監査と検査を徹底し、同じ事故は二度と繰り返さない」と気を引き締める。
一方で今年3月、辺野古沖で同志社国際高(京都府)の生徒計18人を乗せた小型船2隻が転覆し、女子生徒ら2人が死亡する事故が発生。2隻は海上運送法で義務付けられた国への事業登録がされていなかった。
国交省はカズワンの事故を契機に見直された登録制度の啓発・周知に取り組むほか、再発防止のための新たな仕組みづくりも検討している。
〔写真説明〕釧路地裁に入る運航会社「知床遊覧船」社長の桂田精一被告=17日、北海道釧路市
2026年06月18日 08時46分