
今季、京都がJ1の優勝を争うと予想していた人がどれだけいただろうか。前半戦を折り返しても勢いは衰えず、シーズン終盤へ。首位鹿島を勝ち点5差で追う状況で迎えた10月19日の湘南戦。引き分けに終わった試合後、宮本は人目をはばからずに泣いた。
退場者を出す劣勢をはね返し、土壇場で追い付いた。初優勝に望みをつないだが、宮本の胸の内は違った。「正直もう厳しい」。重い足取りでスタンドへあいさつに向かうと、心を動かされた光景があった。逆転を信じ、鼓舞するサポーター。「誰一人諦めていなかった。火は消えていないと、気付かされた」。感謝の思いから涙がこみ上げた。
自身を感情的になりやすいタイプと語るチームの柱。次節の鹿島戦でも、目を真っ赤にしてピッチを後にする姿があった。必勝を期した大一番。1点リードで白星が見えた終了間際、相手エースの鈴木に同点ゴールを許した。目の前で決められ、「後悔しているプレー」と宮本。優勝は遠ざかった。周囲には鹿島を追い詰めたと映っても、本気でタイトルに挑んだからこその涙だった。
クラブ新記録となる10戦負けなしをマークし、一時は首位に立った。3位は最高の成績。2桁順位がほとんどで、残留争いも経験したチームは、就任5年目のチョウ貴裁監督の下で成長。ハイプレスに加え、全員でゴールを狙うスタイルが花開いたシーズンだった。
12月6日、最終節の神戸戦。快勝で締めくくると、宮本はチョウ監督と涙ながらに抱き合った。また違った感情になったという。「僕一人の力ではここまで来られなかった。最後、喜び合えたことがすごくうれしく思った」と宮本。懸命に頂点だけを目指した一年は、充実したものだった。
【時事通信社】
〔写真説明〕新潟に勝ち、喜ぶ京都の選手=4月、デンカS
〔写真説明〕新潟に勝ち、笑顔で宮本(中央左)らを迎える京都の※(恵の心が日)貴裁監督(中央右)=4月、デンカS
2025年12月10日 07時09分