
今月中旬まで行われたテニスの全米オープンで、元世界ランキング1位の大坂なおみ(フリー)は16強入りし、今年の四大大会を終えた。
昨年の全米ベスト4に続き、今年は全仏オープンで4回戦、ウィンブルドン選手権では準々決勝に進出と、苦手だった両大会で自己最高成績をマーク。ウィンブルドンの前哨戦では決勝に進むなど、出産を経て再び高いレベルで安定して戦えるようになった。産後の競技復帰のハードルの高さについて、国立スポーツ科学センター(JISS)で女性アスリートの支援に携わる産婦人科の能瀬さやか医師に聞いた。
大坂は2023年1月に妊娠を公表し、同年7月に娘のシャイちゃんを出産。24年1月にツアーに復帰した。能瀬医師は「個人や競技で差があるため、一概には言えないが、平均的か順調な復帰ではないか」と言う。
出産する選手は心身の両面に不安が生じる。骨盤の底を支える骨盤底筋は、出産時に胎児が産道を通ることで緩み、損傷も起きて機能が低下する。「テニスなら、俊敏性や瞬発力への影響がある」。女性ホルモンの低下により骨密度が下がり、疲労骨折のリスクも高まる。
一時的なパフォーマンス低下への懸念や、育児の悩みを抱えて精神的に不安定となるケースも。「海外遠征が長期間に及ぶため、育児環境の整備も課題になる」。第一線に戻るには、乗り越えなければいけない壁は多い。
近年の日本スポーツ界では、出産後も活躍するアスリートが増えてきた。JISSでの妊娠期、産後選手のサポートも増加傾向にある。アスリートに限定した医学的な知見が国際的に不足している課題もあるが、「認識が変わってきた印象はある。以前は競技続行か出産して引退するかの2択だった」と語る。
ママアスリートの活躍は、出産を望む選手にとって良き先例となる。能瀬医師が選手に産後復帰を目指す理由を尋ねると、「『同じ競技の先輩がそうだったから』という回答が非常に多い」という。
大坂は復帰から徐々に力を取り戻し、21年全豪オープン以来の四大大会優勝も期待されるようになった。母としての顔も持ちながらコートを駆け回る姿は、他の選手の希望にもなる。
【時事通信社】
〔写真説明〕国立スポーツ科学センターで、女性アスリートの支援に携わる産婦人科の能瀬さやか医師(本人提供)
〔写真説明〕テニスの全米オープン、女子シングルス4回戦でショットを放つ大坂なおみ=7日、ニューヨーク
2026年09月18日 07時03分