部品製造に使う金型を無償で保管させるなど下請法違反に当たるケースが相次いでいることを受け、公正取引委員会が発注元に対し、違反を自主申告する「自発的申出制度」の利用を呼び掛けている。申告の際に改善が認められれば、会社名を公表されないなどのメリットがあり、制度利用により「あしき商慣習」(公取委幹部)を一掃するのが狙いだ。
金型保管を巡っては、昨年7月にトヨタ自動車の子会社、同11月に住友重機械工業の子会社、同12月に東証プライム上場会社が下請けに無償で保管させたとして、下請法違反で相次いで公取委から勧告を受けた。
「このような商慣習を一掃するには、企業経営者がリーダーシップを発揮して、社内に自主点検すると号令して対応する必要がある」。公取委の向井康二官房審議官は今月23日、発注元に対し、自発的申出制度の活用を訴えた。特定企業の下請法違反発表の記者会見の場に同席して呼び掛ける異例の対応だった。
同制度は公取委の調査開始前、会社が下請法違反に該当する行為を自発的に申し出た場合、下請け業者の利益回復などの対応をしていると認められれば勧告されない制度。2008年から始まり、勧告と違って会社名は公表されない。
公取委によると、企業が同制度を使って違反を申し出たのは14年度以降で496件。下請け業者への代金を不当に減額したケースがほとんどで、今回問題となった金型の無償保管に関する申し出は3件にとどまっている。
向井氏は金型の無償保管について「底が見えない」と述べ、発覚していないケースが数多くあるとの認識を示す。公取委は同制度の利用を促すだけでなく、監視をさらに強化する方針だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕記者会見で「自発的申出制度」の利用を呼び掛ける公正取引委員会の向井康二官房審議官=23日、東京・霞が関
2025年01月30日 07時29分