【花蓮(台湾)時事】台湾東部沖で発生した震度6強の地震から3日で1年。大きな被害が出た花蓮県や中心都市の花蓮市では、住み慣れたわが家を破壊された人々が転居先で、住宅再建に望みをつないでいる。だが、新築や耐震化には高額な費用が壁として立ちはだかる。
◇再び家族一緒に
元飲食店経営者の呉声輝さん(65)は、日系企業を退職した兄の永和さん(75)ら家族10人で花蓮市の5階建ての住宅兼店舗に住んでいた。地震発生時、娘に譲った1階の飲食店がつぶれ、2階にいた声輝さんは窓から脱出。店員や客も倒壊前に外へ避難し、奇跡的に人的被害は出なかった。
後日、自宅が取り壊される様子を兄弟で見守った。永和さんは「涙が出たよ。弟もつらくて泣いていた」と振り返る。思い出の品は何も持ち出せなかった。
兄弟は現在、別々に暮らす。親から相続した土地に家を再建し、再び一緒に住むのが目標。ただ、以前と同じ床面積で新築する費用は2800万台湾ドル(約1億2600万円)と見積もられ、行政の補助金を充てても高齢の2人には重い負担だ。声輝さんは「仕事を見つけ、家族みんなで稼がないといけない」とため息をついた。
◇団結して助け合い
花蓮県にある築29年のマンションは、外壁が至る所で剥がれ落ち、そのままでは居住不可と判断された。6月までに始まる耐震補強工事は2027年に完了し、住民が戻るめどが付いた。
管理組合代表で小学校教諭の李国隆さん(48)によれば、耐震補強の費用は1億台湾ドル(約4億5000万円)以上。補助金では足りず、入居する118戸が各60万台湾ドル(約270万円)を負担することで住民の同意を取り付けた。地震の傷痕が生々しいマンションの地下で運営を続ける管理組合は、費用負担の余裕がない高齢者らに融資する金融機関を探す役割も請け負う。
近くに引っ越した李さんは、仕事の前後に管理組合へ顔を出す。ばらばらに暮らすマンション住民からの相談には、通信アプリ「LINE」で応じる。「災難に遭ったときは、団結して助け合うことがとても重要だ」と実感している。
◇天災への対応力向上を
花蓮市に置かれた行政院(内閣)の出先機関、東部連合サービスセンターの郭応義副執行長は「行政は住宅再建に協力するが、全財産を元通りにはできない」と語る。それでも、花蓮は地震や台風にたびたび見舞われ、新たな設計基準に基づく建築が増えたことで、被害をある程度は抑えることができたと説明。「天災に備える強靱(きょうじん)さや対応力を高める」ことが、引き続き課題だと指摘した。
【時事通信社】
〔写真説明〕地震で倒壊した自宅の跡地に立つ呉声輝さん(左)と兄の永和さん=1日、台湾東部花蓮市
〔写真説明〕地震で壊れたマンションの外壁を示す李国隆さん=1日、台湾東部花蓮県
2025年04月03日 07時09分