噴霧乾燥機の不正輸出容疑で警視庁公安部に逮捕され、後に起訴が取り消された機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)側が国と東京都に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁で言い渡される。社長の大川原正明さん(76)は「『捜査に問題があった』という警察官の証言を生かした判決にしてほしい」と願う。
「まあ、捏造(ねつぞう)ですね」。一審東京地裁の証人尋問で、捜査に当たった同庁の現職警察官はこう証言した。別の警察官も「幹部がマイナス証拠を取り上げない姿勢だった」と組織を批判し、訴訟は大きな注目を集めた。
控訴審で同社側は、当初捜査に難色を示していた経済産業省が協力的になった経緯を記した公安部の捜査メモなどを新証拠として提出した。メモには「ガサ(家宅捜索)で得た情報を基に別件で立件してもらえれば、ありがたい」とする経産省側の見解が記載されていた。
法廷では新たに証人出廷した当時の捜査員が、同社側代理人弁護士から「密約ではないか」と問われ、「その通りだと思う。法令を無視したものだ」と証言した。
大川原さんは「よく言ってくれた。感謝しかない」と振り返り、「内部告発をした警察官が決して不利益なことにならないよう、高裁判決は3人の証言内容を生かしてほしい」と期待する。
共に逮捕され、勾留中に胃がんが発覚した元同社顧問の相嶋静夫さん=当時(72)=は起訴取り消し前に亡くなった。大川原さんは、無罪を主張するほど身柄拘束が長引く「人質司法」の問題点を訴え、「長期勾留が続けば無実の人間が亡くなる。人質司法はなくさないといけない」と力強く語った。
2023年12月の一審判決は、警視庁と東京地検による捜査の違法性を認定し、国と都に計約1億6000万円の賠償を命じた。一方で、警察官の証言に対する言及はなく、双方が判決を不服として控訴した。
【時事通信社】
〔写真説明〕二審判決を前に取材に応じる「大川原化工機」社長の大川原正明さん=13日、横浜市都筑区
2025年05月27日 07時05分