国に「丁寧な説明」求める=「賠償認めるべき」意見も―最高裁判決・生活保護訴訟



生活保護基準額の引き下げを巡り、最高裁第3小法廷の多数意見は物価変動率のみを指標とした減額(デフレ調整)を違法としたが、低所得世帯との格差を是正する措置(ゆがみ調整)については違法性を認めず、国への賠償請求も退けた。裁判官からは国に「丁寧な説明」を求める意見が出る一方、宇賀克也裁判長はゆがみ調整についての判断に異論を唱え、国家賠償も認めるべきだとする反対意見を述べた。

生活保護基準額の算定方法は1984年度以降、国民の消費動向を踏まえて前年度までの消費実態との調整を図る方式だった。しかし、問題となった基準額の改定で、厚生労働省は物価変動率を直接の指標として用いた。

これに対し同小法廷は、物価は変動すれば消費行動に一定の影響が及ぶものの、関連付けられる要素の一つにすぎないと指摘。直ちに同程度の消費水準の変動をもたらすとは言えず、実態を把握するには限界がある指標だとした。

その上で、基準額の改定について「専門的知見に基づいた十分な説明がされていない」と指摘。厚労省の専門部会による検討も経ておらず、厚労相の判断過程に過誤や欠落があったと結論付けた。

ゆがみ調整で専門部会の検証結果を2分の1しか反映しなかったことについては、林道晴裁判官が補足意見で「部会の意見を聴取し、反映することも可能だった」と言及。「受給者の生活に与える影響の大きさに鑑みれば、そのような手続きを経る方が生活保護行政の在り方としてより丁寧だった」として、「今後は国民一般の理解も得られるよう、丁寧な検討を進め、結果について意を尽くした説明を期待したい」と述べた。

一方、宇賀裁判長は反対意見で、「ゆがみ調整の必要性と根拠については、行政の説明責任があるはずなのに説得力ある説明がなされていない」と指摘。物価変動率のみを指標とした改定は「違法で過失も認められる」とし、受給者らの精神的損害は1人1万円を下回らず、賠償請求も認めるべきだと述べた。

【時事通信社】

2025年06月28日 07時06分

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