最終号機で「有終の美を」=精密部品、支えた技術者―H2Aロケット



H2Aロケットの打ち上げには、厳しい品質要求に応え、工夫を凝らして精密部品を造ってきた技術者たちの存在が欠かせない。最後となる50号機の打ち上げを前に、長年支え続けた熟練工は「有終の美を飾ってほしい」と期待している。

名古屋市の小坂鉄工所は、1機につきバルブなど700~800点を納入してきた。長年製造に携わった横田悦二さん(58)は「動作をヘリウムガスで制御しているため、ガス漏れしない工夫が必要。要求も厳しく大変だった」と振り返る。

H2Aの開発時は今ほど工具類が充実していない時代。思い通りのものがなければ自作したが、過酷な環境にも耐え得る高強度な材料に歯が立たたないことも。無駄になった工具も多かったといい、「忍耐がいるし、格闘だった」と苦笑い。「よく50機分も部品を造ったな」と感慨深げだった。

第1段エンジン「LE―7A」内に液体水素を流して冷却する「銅チャンバー」などを製造したのは愛知県稲沢市のアイコクアルファだ。冷却効率を高めるため、液体水素が流れる溝の加工には適度な粗さを残すなど、高度な技術が求められた。

加工を担当した堀川幸成さん(46)は「表面を安定して均一に造るのは難しく、要求値を満たす粗さにするのは大変だった」と振り返る。少しの揺れでも影響を受けるため、作業を中断することも多かったという。

50号機は29日に打ち上げられる。堀川さんは「成功率を98%に上げて完結かなと思っている。有終の美を飾ってほしい」と期待している。

【時事通信社】 〔写真説明〕小坂鉄工所で長年H2A部品の製造に携わった横田悦二さん。持っているのは自作の工具=16日、名古屋市 〔写真説明〕アイコクアルファでH2Aの部品「銅チャンバー」を製造していた堀川幸成さん(左)ら=17日、愛知県稲沢市

2025年06月28日 14時31分


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