【ワシントン、北京時事】米中両政府はスウェーデンのストックホルムで28、29両日に開いた閣僚級協議で、一部関税の停止期間延長で一致した。ただ、関税の引き下げ幅拡大など、一段の緊張緩和に向けた具体的な進展はなかったもよう。あらゆる分野で摩擦を抱える米中の立場の隔たりが改めてあらわになった。
「対話をさらに進め、双方にとってより多くの利益につながる成果を目指すべきだ」。中国国営中央テレビによると、何立峰副首相は協議でこう呼び掛けたという。
米中は8月12日を期限とする24%分の関税の停止期間を延長。90日間を新たな期間とする方針だ。従来の合意内容の履行を続けることも確認した。トランプ米大統領はベセント財務長官から報告を受けた後、記者団に「とても良い会談だった」と語った。
だが、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は、「(米中関係は)構造的に複雑であり、今回の協議で大きな進展はなかった」とする専門家の声を紹介。双方とも対立激化は避けたい一方、「譲歩したと見られることも望んでいない」と指摘した。
トランプ氏はロシアの貿易相手国に100%の「2次関税」を課す考えで、米側は協議で中国によるロシア産原油の購入を批判した。ベセント氏は「中国は主権を非常に重視しており、われわれはこれを侵害したくない。(代わりに)100%を支払いたいのだろう」と述べ、中国の強い反発があったことをにじませた。
中国外務省の郭嘉昆副報道局長は30日の記者会見で、「中国は国益に基づき合理的なエネルギー安全保障措置を取る」と米国をけん制。米制裁を念頭に「主権と安全保障、発展の利益を断固として守り抜く」と対抗措置を示唆した。
一方、トランプ氏が「年内」と見通す習近平国家主席との会談を視野に、過度な対立は避けたい思惑もあったようだ。米国は半導体などの輸出規制緩和を継続。中国も引き続きレアアース(希土類)の輸出を一定程度、容認するとみられる。
中国では協議前から、今回の米中の狙いは「時間稼ぎ」(外交筋)といった見方が上がっていた。互いにけん制し合う両国の溝は埋まらぬままで、ベセント氏は新たな期限までに次回協議を開く可能性を示唆した。
【時事通信社】
2025年07月31日 12時45分
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