スーパーの店頭に並び始めた2025年産米は、高騰した24年産を超える高値になりそうだ。肥料など生産資材の値上がりで農家のコストが膨らんでいる上に、猛暑や大雨の影響で品質、収穫量の低下が懸念され、新米を確保しようと農協(JA)とそれ以外の集荷業者の競争が激化。コメ農家に各地のJAが前払いする「概算金」も、全国で大幅に引き上げられている。
米所の山形県はこれから収穫が本格化するが、猛暑による渇水の影響が懸念されている。JA全農山形が決めた25年産米の概算金は、過去最大の引き上げ幅。1等米60キロ当たりの値段は主力銘柄のはえぬきが2万8000円、つや姫が3万1000円、雪若丸が2万8600円と、いずれも前年より1万1500円高い。関係者は大幅引き上げの理由を「JA以外の業者に負けない価格にするためだ」と説明した。
宮崎県は、収穫がほぼ終わった早場米のコシヒカリの概算金が昨年より6割高い3万2600円だった。JA関係者によると、集荷競争は昨年以上に厳しく、農家の生産意欲を向上させることも意識して金額を決めた。宮崎県高鍋町のコメ農家、徳丸拓郎さん(45)は「生産者はカツカツだ。今の値段なら経営基盤をつくりやすい」と話す。
一方、値上がりは消費者のコメ離れを招きかねず、徳丸さんは「流通の仕組みをスリム化できれば安くなるのではないか」と指摘する。宮崎市内のスーパーの仕入れ担当者は、秋以降の価格動向について「値段は下がらないと思う。消費者は買えない」と懸念した。
JA福井県はコシヒカリが2万9000円、いちほまれが3万400円と、過去最高額を農家に前払いする。県内のJA系スーパーは8月下旬、わせ品種ハナエチゼンを5キロ税別4380円と前年の4割高で販売し始めたが、担当者は「売れ行きは鈍い」と明かした。
JAしまねの概算金はコシヒカリが2万8400円と、数年前の2.5倍に跳ね上がった。収穫期が近づく宮城県は、ササニシキが前年より1万2500円高い2万9300円、ひとめぼれが1万1500円高い2万8000円に設定された。JA全農みやぎは「現状で見込める最大限の水準だ」と説明した。
【時事通信社】
〔写真説明〕店頭に並んだ宮崎県産コシヒカリの新米=7月31日、東京都小平市のいなげや花小金井駅前店
2025年09月02日 07時27分