集団的自衛権の行使を限定的に認める安全保障関連法が成立してから19日で10年がたった。日米間では運用面の一体化が進み、同志国との連携に伴い自衛隊の活動は広がった。日本周辺の安保環境は中国の軍備増強などにより急速に悪化しており、政府は引き続き防衛力の強化を図る方針だ。
「日米同盟はかつてないほど強固となり、抑止力・対処力も向上している」。林芳正官房長官は18日の記者会見で、安保関連法の意義を改めて強調した。
安保関連法は安倍政権下の2015年9月、反対の世論が渦巻く中で成立した。日本と密接な関係にある国に対する武力攻撃により、日本の存立が脅かされる状態を「存立危機事態」と定義。条件付きで集団的自衛権行使に道を開いた。戦後日本の安保政策の転換点となった。
運用面で進んだ一つが、平時から自衛隊が他国の艦艇や航空機を守る武器等防護だ。17年以降、米軍に対しては毎年行い、24年度までの実績は140件に上る。21年に「準同盟国」と位置付けるオーストラリア軍にも適用した。
今年8月には初めて英国を対象とし、海上自衛隊の護衛艦が英海軍の「プリンス・オブ・ウェールズ」を中心とする空母打撃群を警護した。防衛省幹部は「他国との相互運用性や信頼感が高まる。一緒に行動できると示すことで、周辺国ににらみを利かせられる」と説く。
一方で、米軍などとの一体化が進めば、海外の紛争に巻き込まれるリスクが高まる、との懸念も根強い。共産党の田村智子委員長は18日の会見で「世紀の大悪法だ。『戦争をする国』へのターニングポイントとなってしまった」と批判した。
西太平洋地域の米中軍事バランスは中国優位に傾き、中国、ロシア、北朝鮮の連携も目立つ。別の防衛省幹部は「安保法制は10年を経て重要性が増している」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕安全保障関連法に基づき初めて米艦防護を実施後、シンガポールに寄港した海上自衛隊の護衛艦「いずも」=2017年5月、シンガポール
2025年09月19日 07時03分