チケットや入場・来館日時のオンライン予約を通じ、「並ばない万博」を掲げた大阪・関西万博。しかし、ゲート前や会場内では長蛇の列が目立ち、来場者から不満が噴出した。日本国際博覧会協会や一部のパビリオンは、独自の方式で混雑を緩和して来場者の満足度向上につなげようと試行錯誤したが、なお課題は残った。
今回の万博では、入場自体に予約制を採用。会期終盤にはチケットを持っていても予約できずに入場できない人もいた。協会は9月27日以降、当日券と交換できるようにしたが、1日当たり数百枚にとどまったことから、今度は当日券への引き換えを求める人がゲート前に殺到した。
9府県が出展した「関西パビリオン」は、開幕日から完全予約制を採用し、「並ばない」を実現した。担当者は「熱中症が懸念される暑さの中で、急病人が発生せず良かった」としつつ、「『予約が取れない』というクレームもあった」と課題を口にする。
一方、予約制を採用しない海外パビリオンでは入場規制も行われ、SNSでは「並べない万博」と冷やかすコメントも見られた。
そんな中、メディアアーティストの落合陽一氏が手掛ける「null2(ぬるぬる)」パビリオンでは8月から、予約不要でパビリオン内を立ち止まらず歩いて観覧できる方式を一部で採用した。落合氏は「並ばない万博、並ぶ万博、どちらでも良かったが、熱い思いで来てくれるお客さんを何とかして入れてあげたかった」と話す。
今回の万博について、SOMPOインスティチュート・プラスの岡田豊上席研究員は「『並ばない万博』にこだわった結果、(入場したものの)何もできずに帰る人を増やしてしまった」と分析。「混雑状況に合わせて価格が変動する『ダイナミックプライシング』をもっと大胆に導入すれば良かった」と指摘した。
【時事通信社】
2025年10月12日 07時00分
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