ブータン、特区整備で若者流出阻止=外資誘致へ「一国二制度」



【ニューデリー時事】ヒマラヤの王国ブータンが「一国二制度」を適用する特別行政区を整備している。同国は経済的豊かさよりも幸せの実感度「国民総幸福量」(GNH)の追求を国是としてきたが、近年は若者の国外流出が課題となっている。外資を誘致して働く場を確保し、若者を呼び戻す狙いがある。

特区はインド国境に近い南部ゲレフーに設置。「ゲレフー・マインドフルネス・シティー」と名付け、今年から本格的に建設を始めた。広さは東京23区の4倍超の約2600平方キロ。玄関口となる国際空港は2029年までの開港を目指す。

ワンチュク国王が23年末に構想を発表して以来、各国政府や企業に投資や進出を呼び掛けてきた。

特区では企業や投資家が活動しやすいようシンガポールの会社法などを適用。独立した司法機関も有し、向こう20年は「完全な自治」が認められる。空港や橋といったインフラには地元産の木材や竹を積極的に使用。自然環境に配慮すると同時に暗号資産(仮想通貨)をはじめとするフィンテックの拠点としても位置付ける。

ブータンは最近、水力発電に伴う余剰電力を活用し、暗号資産取引の計算作業に協力する見返りに新規発行分を報酬として得るマイニング(採掘)に注力。世界でも有数の暗号資産保有国に躍り出た。

人口80万人弱の同国は農業や観光業が主要産業。失業率の高さが深刻な問題になっており、若年層の多くは就労機会や好待遇を求めオーストラリアを中心とする外国に渡っている。

トブゲイ首相は時事通信のインタビューに対し「若者が働くプラットフォームや、海外にいる若者が戻れる場を提供する」と、特区の目的を説明。「われわれの大切にする国民総幸福、調和といった理想や原則に基づくと同時に、経済的に非常に競争力を持つものになる」と自信を示した。

インドも計画を後押しする。今月ブータンを訪れたモディ首相は計画への全面的な支持を表明。9月にはインド北東部の都市とゲレフーを結ぶ区間を含む鉄道2路線の建設を発表した。建設費はインド側が全額負担。ブータンに鉄道が敷設されるのは初となる。

【時事通信社】 〔写真説明〕ブータン南部ゲレフーの特別行政区「ゲレフー・マインドフルネス・シティー」に整備される国際空港のイメージ(同特区ホームページより・時事) 〔写真説明〕インタビューに応じるブータンのトブゲイ首相=7日、ティンプー

2025年11月25日 08時00分


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